2015/06/17

写真家・所幸則さんと私

僕はふだん演劇を生業にしている。映画もちょっとやってる。そんな僕が写真家・所幸則さんを知るようになったのは、2010年11月22日である。twitterで所さんに話しかけていただいた。
 
そのころの僕はtwitterにハマりまくっていた。1日50回ぐらい、ときに100回近く熱心にtweetをしていた。情報を発信すること、旗を挙げることに意味があると思っていた。twitterという新しいコミュニケーションツールに期待をしていた。これまで開けなかった何かを開く可能性があると期待をしていた。なので依存症のようにtwitterにハマることを自分に許していた。
 
所さんが僕にとばした最初のtweetは所さんの勘違いに近いtweetだった。たぶん事故だ。それでも所さんが声をかけてくれたことで、僕は所さんの存在を知った。twitterカウントのプロフィールをたどり、所さんのHPにたどりついた。そして、所さんの作品群を目にすることになった。
 
所幸則さんのHP http://tokoroyukinori.com/
 
所さんが初めて僕にtweetしてくれたのが深夜の1時30分。その30分後の2時ちょうど。僕は次のようなtweetを所さんに向けて飛ばした。「遅ればせながら、先ほどHPで見させていただいたのですが、所さんの撮られる写真やばいスね。素敵です。」魅了された瞬間だった。以来、一貫して、僕は所さんの作品に魅了されている。
 
所さんの作品の魅力。とくにone-secondというコンセプトによる写真群の魅力。それは端的に言うと、「ロゴス的」であるということだ。
 
人間はリンゴを見てリンゴをみるわけじゃない。リンゴを見て、その酸っぱさだったり、シャリシャリ感だったり、あるいはその硬さ、重さ、痛さ、凶器性を感じるかもしれない。あるいは大きさ、あるいは木々、森、産地、農地、アダムとイブ、ニュートン、ウィリアム・テル、リンゴのある食卓で目にした夫婦喧嘩の記憶、映画の中のワンシーン、車にはねられた主婦のカゴから転がるリンゴ、しゃりっと噛んだ断面にうねうねと顔を出す幼虫、血のしたたる取りだされた心臓、魂、21グラム・・・。人間は物を見て概念を取り出す。神の言葉「ロゴス」を探る。
 
アイドルのグラビア写真は典型的だが、あれは写真家の存在がほとんど無色透明だ。無色透明であることを求められている。グラビア写真を観たい人たちは被写体であるアイドルを観たいだけ。間違っても、写真家のアーティスティックな主張なんて見たくない。だから主張のあるグラビア写真なんてたまにあるが、amazonなんかでは不評の嵐だ。
 
グラビア写真の対極にあるのが所さんの写真のような気がしている。それは世界解釈の意志に満ちた写真だ。映る少女は、少女自身を離れて、社会の冷酷な風にさらされ、不安を抱いてそこに立つ。写真は少女ではなくて、社会そのものを描く。あるいは社会を動かしている冷たい風を、熱い欲望を描く。所さんの写真に出会った時に僕は閃きの雷光に打たれた。
 
2010年の暮れ、僕はtwitterにハマっていることもあって、社会の矛盾や問題に直面し、またそれを変革する欲望にも直面した。twitterが世界を変えるかもしれない。少なからぬ人たちがそう思っており、僕もその可能性を感じていた。グラビア写真のような演劇には飽きていた。社会変革たる演劇が必要だと感じていた。そう考えていて、演劇をする先輩や仲間をまきこんで、「日本の問題」という舞台を企画した。既に名のある8劇団、学生劇団6劇団計14劇団を集めて、それぞれが「日本の問題」と思うことを短編の演劇で描き、それを様々な識者に見ていただき、一緒に考え世間に対して問題を提起していこうというような公演を企画していた。
 
 
だから、社会や国家を描きうる所さんの写真に出会った時、「日本の問題」のメインビジュアルはこの人に撮ってもらうしかないと思ったのだ。
 
年明けて、2011年2月15日、僕はその依頼を所さんにメールした。予算があまりないこと、しかし、今この演劇「日本の問題」をやることには意味があること。そしてそのメインビジュアルは所さんの新作写真を除いては考えられないこと、などを伝えた。所さんは快諾してくれた。
 
2011年3月11日、東北を大地震が襲った。福島の原子力発電所がメルトダウンした。その波を「日本の問題」もかぶらざるを得なかった。メインビジュアルも、たとえば、実際の被災地に行って撮影をしようかというような案も出た。原発の写真こそが「日本の問題」を象徴する絵なんじゃないかというような意見もあった。しかし、結果として、所さんが撮り、僕が選んだのが「東急東横線の少女」という写真だ。
 
Photo
 
写真には一人の少女が映っている。出発を待つ車両の中、不安に携帯を持つ少女。彼女の不安に目を止めることなく行きかうサラリーマンや主婦などの大人たち。彼らは皆ゴーストのように映っている。そして向こうには不吉な渋谷の空。
 
意図したものではない。グラビア写真のように、そこにあるものを撮っただけだ。だが、それが所幸則という写真家の撮る写真のロゴス的である所以なのだろうが、ここに映っているのは、まぎれもない「日本の問題」なのだ。満員電車が問題とか、少女の孤独が問題とか、そういう個別のことではない。ここに写ってるのは、もっともっと抽象的でまさにロゴスとしか言いようのないもの。社会の問題であり、国家の問題であり、いままさに我々が直面している全てが包摂されている。事故った原発の写真にしなくてよかったと思う。もしそうしていたら、その写真の意味するものは「日本の問題」ではなくて「原発の問題」にすぎなくなる。
 
僕は所さんの写真が好きだ。2014年3月、チェーホフの「かもめ」を舞台にかけたときにも、写真を新しく撮りおろしてもらった。舞台でヒロインのニーナを演じるダブル・キャスト、当時15歳の宇野愛海と当時25歳の縄田智子の2人をモデルに撮影をした。
 
Kamome_2
 
写真には2人の少女が映っている。深い森の中で戯れる2人の少女。天からは祝福の白い羽根が無数に舞い落ちてきている。そして、その表象は所さんの手にかかるとロゴスとなる。少女の無垢性、悪魔性、生命の美しさと儚さ、そして無邪気な少女の欲望。舞台「かもめ」で僕が最もクローズアップしたかった「概念」がそこにあった。この写真も、まさに所さんの写真のロゴス性が発揮された作品であると思う。
 
そして同年8月、新国立劇場で佐野史郎さんを主演に向かえて披露された「安部公房の冒険」という舞台。このときにも所さんの写真を使わせていただいた。しかし、これまでの2作品とは異なり撮りおろしではない。以前、所さんの個展を観に行って僕がどうしても欲しくなり購入したプリントを使った。
 
Abekobo
 
「安部公房の冒険」の脚本を書き終わって、宣伝美術をどうしようかなと考えていた時に、部屋に飾られたその写真が目に入り「これこそ」と閃いた。安部公房という稀代の作家の作風。その無機質性、コンクリートな空間。その硬質な世界の中、ただひとり、孤独に耐えてそこに居る美しい生身の女性。僕の買ったその写真は舞台「安部公房の冒険」で僕が描こうとしている「概念」そのものだった。
 
なんども言うけれども、僕は所さんの写真に魅了されている。所さんの写真は、他の写真や絵や物語では得られない快楽を僕に与えてくれる。それは知的な快楽だ。世界を解釈することの許された神の言葉ロゴス。その聞こえない音を耳にする禁断の快楽とも言って良いだろう。そして、今日も、僕はその美しい言葉を聞くために、所さんの写真を眺める。僕はこれからも、所さんの写真に飢え続ける宿命なのだ。
 
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その所幸則さんが、新作の写真集を出すためにクラウドファンディングをしている。

https://greenfunding.jp/lab/projects/1083
もうすでに145万円あつまっている。
けれども、ぜひ、所さんの写真に興味を持った方は、参加し新しい写真集を手に入れられてはどうかと思う。お勧めします。

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2014/07/03

「安部公房の冒険」

 ようやく、2014年8月公演の情報を公開できる日がやってきました。と言っても、ちょろっとだけですし、ホームページはまだ「かもめ」のままなんですが。

 8月23日から同月31日までの9日間、新国立劇場小劇場で公演をうちます。
 
 題して安部公房の冒険
 
 三島由紀夫などと並ぶ昭和の文豪安部公房 のいくつかの逸話をベースにして虚実ない交ぜの人間ドラマを展開する予定です。
 
 劇団の本公演はいつも僕が演出をするのですが、今回は特別。現在僕が敬愛してやまない稀代の名プロデューサーにして映画監督の荒戸源次郎 氏に本作の演出をお願いをしました。
 
 そして、出演者は次の4人です。
 
 
 出演を僕と荒戸監督が熱望したとはいえ、高校時代にひょんなことで見て衝撃を受け忘れられぬ映画の一本となった林海象監督の「夢みるように眠りたい」や、金子修介監督の手がけた名作の中の一つ「毎日が夏休み」などに主演した、あの佐野史郎さんと、このように一緒に作品を作れる日が来るとは思ってもみませんでした。しかも、非常にタイトなスケジュールの中、脚本を気に入っていただき万難を排して出演をしていただいたという光栄な展開。佐野さんの過去の名作、林監督や金子監督の名作とならぶ…いやそれ以上の魂にひびく作品とするべく演出荒戸源次郎監督ともども頑張りたいと考えています。
 制作さんは、新しい方と組ませていただきました。
 なぜならうちの制作はDULL-COLORED POPの「河童」で踊っているから…。

 美術:坂本 遼、衣裳:伊藤摩美、音響:筧 良太、
 照明:柳田充(Lighting Terrace LEPUS)、
 ヘアメイク:清水美穂(
THE FACE MAKE OFFICE)、
 舞台監督:本郷剛史/青木規雄、宣伝美術:ナカヤマミチコ、
 制作助手:平岩信子、制作:山川ひろみ
 
 劇団公演としては3回目となる新国立劇場小劇場公演です。1回目の「ルドンの黙示」は出演者36人、2回目の「国家~偽伝、桓武と最澄とその時代~」は出演者28人、そして3回目の今回は出演者4人。結構「冒険」してます。安部公房の冒険じゃなくて松枝の冒険としても良いぐらいに冒険してます。
 
 そして見どころが非常に沢山ある。必見の公演になります。なると思います。なにがどうなのか。いろいろ語りたい。ですが、今日のところは、このぐらいに。また書きます。続報をお待ちください。チケット発売は7月18日正午からです。
劇団ホームページはこちら→http://www.alotf.com/

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2013/08/04

実験公演「被告人~裁判記録より~」

夏の終わりに実験的な舞台をやります。

どんな芝居かと言いますと
5つの実際にあった事件の公判記録(一部調書)を台本とみたてて
芝居にするという趣向の芝居です。
それぞれ裁判記録は長いのでそれを全部やるわけではありません。
抜粋し編集をします。
また、上演するうえで、当然演出もつけます。
さらに、不親切だなあと思うところには言葉を足したりなどします。
今後の稽古の進捗ではかなり足すかもしれません。
なので、裁判の再現というような出し物にはならないです。
でも、ある切実な事実に基づいた何かをお見せできるのではないかと思っています。
ぜひぜひ、見に来てください。
観客の皆様、役者スタッフみんなで、僕らが本来向き合わねばならない何かに向き合うことができたとしたら幸いです。
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事実は小説より奇なりと申します。
本公演は、実際の裁判記録をテキストにして
被告人の生の言葉を蘇らせる実験公演です。
実験に選ばれた事件および被告人は次の5つです。
(1)秋葉原無差別殺人事件(被告人:加藤智大)
(2)連続不審死事件(被告人:木嶋佳苗)
(3)日本社会党委員長刺殺事件(被告人:山口二矢)
(4)226事件(被告人:磯部浅一)
(5)異端審問裁判(被告人:ジャンヌ・ダルク)
生きることのギリギリで犯さねばならなかった事件。
本当にそれは罰せられるべき罪だったのでしょうか?
被告人たちの真実の言葉が必ずやあなたの魂を揺さぶるはずです。
とは言うものの、「再現ビデオ」のような公演とするつもりはありません。文字を俳優の肉体を通し演劇として立ち上げるうえで、僕らの解釈や人生が反映してしまう事になると思います。その過程で偽りない人間を発見して行けたらと思っています。なにはともあれ公判記録を「あまり」いじくらないで舞台化すると言う実験、僕らの七転八倒を見ていただきたいです。このチャレンジ続けていけたらなと思っています。
公演詳細は次のサイトからご覧ください。
チケットはすでに発売しているのですが、毎回50席しかない小空間ですので、ご予約はお早めに。
一応、ご贔屓の役者から買っていただくと、なにかいいことがあるらしいです。
ということで、以下、贔屓の役者の名前をクリックすると、その役者からチケットを後購入できるらしいです。
あと一応

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2011/12/06

「日本の問題」小劇場版終了、その先へ

1年をかけて制作してきた「日本の問題」ですが、昨日ついに小劇場版千秋楽を迎えることができました。

ご来場いただいた皆さま、応援し続けていただいた皆さまには本当に感謝しています。

(今後の参考のためによろしければご感想などをCoRichなどにお寄せ下さい。→コリッチ

 

僕が言いだしっぺで始まった「日本の問題」。

8作品もの愛すべき作品が誕生しました。

畸形だけれども生きようと必死に未来に手を伸ばした8作品、愛して下さってほんとうにありがとうございます。

生まれた彼らは作家の中でさらに成長し、次の新しい創作を生み出す種になることと思います。

経済とH、Mrs.fictions、DULL-COLORED POP、風琴工房、ミナモザ、アロッタファジャイナ、ろりえ、JACROW

「日本の問題」に参加した8劇団の今後の活動をぜひぜひ見守ってやってください。

「日本を演劇で変える」

なんて旗印の下に集まった劇団たちですから、今後の活動が普通であっていいわけではないので、参加した8劇団は責務としてずうっとこれからも「日本の問題」と格闘し続けることになるだろうと思っています。

そしていつの日か本当に日本を変える日が来るだろうと信じています。

 

と、「日本の問題」小劇場版は以上を持って終了です。

終了なのですが、「日本の問題」、この企画自体はまだ終わりません。

12月21日から25日までの5日間、渋谷のギャラリールデコで「学制版 日本の問題」が開催されます。

「小劇場版」は50歳から24歳までの作家たちの作品であったのですが、「学制版」は23歳から19歳と言う若き作家たちの作品群です。

なにが違うって「若い」ってことです。

若いって、それだけで単純に凄い。

もちろん僕らも未来を作るわけだけれども、彼らはもっともっと先の未来を作る。

その未来を作る彼らの作品がどんなものであるか。

これに興味を持たない人はいないんじゃないでしょうか。

そして「小劇場版」8作品だけでなく「学生版」6作品をみて、はじめて今回のイベント「日本の問題」は完成する気がします。

だいたい学生劇団を6劇団もまとめて1日でみることのできる企画ってないだろうし、しかも、それぞれ「日本の問題」なんて共通のお題を与えられているわけだから、同じ土俵で、その未来を形作る若人たちが、どう闘うか、その個性や違いや魅力が、比較的に表現されているはずで、これはもう「未来」が気になる人ならば、全員が全員観に行ってよいぐらいの企画だと思うんです。

だからぜひぜひ観に行って欲しい。

小劇場版「日本の問題」を十分楽しんでいただいた方も、不完全燃焼だった方も、最後の希望、「学生版 日本の問題」にぜひぜひ足をお運びください。

もし今あらゆることに絶望している、しそうになっている人がいるならば、「学生版 日本の問題」を見てからにしてください。「学生版 日本の問題」を見て、未来に希望が見いだせなかった場合にのみ、本気で絶望してください。

僕は信じています。

「若さ」こそが「絶望」を覆す力であると言うことを。

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学生版 日本の問題

http://nipponnomondai.net/students/index.html

学生版日本の問題CoRichページ

CoRichに「期待」のメッセージをぜひぜひお寄せください!

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2011/11/26

「日本の問題」ゲネプロ

ついに「日本の問題」始まります。

おととい劇場入りをし、昨日、チームA(経済とH、DULL-COLORED POP、風琴工房、Mrs.fictions)のゲネプロが終わりました。

本日、11月26日は、チームB(アロッタファジャイナ、JACROW、ミナモザ、ろりえ)のゲネプロがあります。

まだまだ本番前でネタバレなことは言えないのですが、もう、ぜひ来てほしい。

チームAもチームBも見て欲しい。

昨年やったプロジェクト文学の第二弾を考えていて、ちょうど劇場が11/27からだから、直前の11/25は憂国忌。プロジェクト文学三島由紀夫なんてやろうかどうしようか考えていて、でも、それは結構予想の範囲だなあと思っていて、ツイッターなんかやっていてみんなが結構まじめに政治や経済を議論しているのを見て、うむ、プロジェクト文学の政治経済バージョンなんてやったらおもしろそうで、しかも、みんな思いつかなそうと思って、悪戯のように思いついた僕のアイディアが、僕を含む8人のクリエイターの創作意欲を刺激して、この世に生まれ出でた8作品。

こんなにもバラバラな、真摯な、純粋な、いびつな、8つもの作品が生まれた。

喜びもひとしおです。

もちろん、昨年のプロジェクト文学同様、最後の最後まで妥協しない演出家のバトルはもう始まっています。

とっくのとうに始まっていました。

そしてそれはまだ終わっていません。

もう、ほんと、8本全部なんとか見てください。

それぞれの作品の参考として次の記事を読んでみてください。

学生版「日本の問題」主宰の酒井一途くん(ミームの心臓)の渾身の稽古場リポートです。

【チームA】

 「経済とH」の稽古場リポート

 「DULL-COLORED POP」の稽古場リポート

 「風琴工房」の稽古場リポート

 「Mrs.fictions」の稽古場リポート

【チームB】

 「アロッタファジャイナ」の稽古場リポート

 「JACROW」の稽古場リポート

 「ミナモザ」の稽古場リポート

 「ろりえ」の稽古場リポート

で、8本とも僕にとっては思い入れのある作品です。

とは言うモノの、やはり自分の作品は、それとは別の意味で思い入れがあります。

プロデューサー兼演出家なので、ときに、稽古に付き合ってやれなかったりして、役者たちにはフラストレーションをためさせてしまったりしたけど、最後の最後までついてきてくれた12名とそして今回無茶ブリ的に演出助手をお願いした渡部くん、そして僕、14名で、今日のゲネプロに滑り込むことができたことが何よりうれしいです。

もちろん、今日からも、毎日の本番で、確実に素敵な物が出せるように、気を抜かず、そして常にチャレンジし続けます。

タイトルは「日本の終わり」。

どんな作品かは見て下さいと言うところだけれど、先ほど紹介した酒井一途くんのリポートの次のくだりなんかは僕が作品作りにあたって思ったことが書いてある。

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酒井 ・・・主宰されている劇団アロッタファジャイナの作品を通して、この企画で打ち出したいと考えている内容について、少し踏み込んだところをお聞かせください。

松枝 僕自身は従来書いているものとは全然違うものを書いているつもりです。僕が普段やっていることは、「人間関係のこういうことって、イタいよね」ということだったりするんだけど、それとは違う射程範囲の作品だと思う。どういうことかと言うと、演劇で表現することを避けられていそうな内容をあえて扱ってみようと思ったわけ。折角の機会にチャレンジをしないと面白くない。うまくいけば、「こういう表現の可能性もあるのか」というものを見せられるんじゃないかと。それというのも今回の企画では演劇ってこんなにも多様なんだってことを見せたいわけだから僕はあえて危険だなという方向に向かいたいと思っていて。それは主催劇団としての義務だとも思っている。

酒井 観客に見せたいところというのはありますか?

松枝 僕は今回、人間の知性がどれだけ遠距離に飛んでいけるのかという可能性にチャレンジしたいと思っている。無縁社会というのを最初に置いて、そのまま終わってしまうのではなくね。宣伝文に書いてしまって失敗したとも思っているんだけど、例えば僕自身は無縁社会から明治維新に行き着いた。中野でトンネルに入って、別の出口から出てきたら、そこは南極だった、みたいな知的な驚きを与えられれば面白いなって。

酒井 劇を見ることで観客の思考が飛躍していく、ということですね。

松枝 そうそう。僕自身が気付いたことが表現されているんだけど、それを越えて観客が「こんなことも考えられるんじゃないか?」とビックリするほど遠方に飛んで行けるようなものを見せたい。

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そんな感じの物を14人で悩みながら楽しみながら作ったつもりです。

ぜひとも見に来てください。

今日の稽古場写真。

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2011/10/16

「日本の問題」ついに始動!

日本の問題」始動します。

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この公演は、小劇場劇団8団体、学生劇団6団体、計14団体が集まり、それぞれが今一番のこの国の問題と思うことを短編の演劇にして披露するというものです。
 
 
非常に面白い才能を集めることができました。

扱われる内容も多岐にわたっています。

おそらく表現もバラエティーに富んだものになるに違いありません。
 
 
「日本の問題」という一見お堅そうなお題を与えても、こんなに沢山の想像力と表現が存在しうるんだということを楽しんでもらえたらと思っています。
 
 
小劇場版は11/27から12/4の間、中野ザ・ポケットにて公演。
 
 
毎公演後には、ProjectBUNGAKUでやったみたいな座談会をやります。

ProjectBUNGAKUでは、太宰治を語るにふさわしいゲストの方々をお呼びしましたが、今回は「日本の問題」を語るにふさわしいゲストの方々に来ていただこうと思っています。

現段階、まだまだオファー中ですが、一部、ご来場が決まった方々については公表させていただいています。


●いまご来場が決まっているゲストのみなさま●

・当代きっての論客、自民党の衆議院議員、河野太郎さん

・近著「リトルピープルの時代」で現在世間の話題をかっさらっている評論家の宇野常寛さん

・元グラビアアイドルで女優の山田まりやさん

・小説家でエッセイストの中村うさぎさん

・「<民主>と<愛国>」という大著で日本現代史をあざやかに斬ってみせた社会学者の小熊英二さん

・社会派演劇で日本演劇界を牽引し続ける劇作家で演出家の永井愛さん

・漫画家で女優としてもすごい内田春菊さん

・俳優でコメンテーター、テレビで見ない日が無いというキッチュ松尾貴史さん

・女性論の最大論客で東大名誉教授、社会学者の上野千鶴子さん

・経済評論家で大樹総研の所長でもある池田健三郎さん、彼は日銀の先輩でもあります。

・演劇界の水先案内人現代演劇ウォッチャーの高野しのぶさん


チケットの発売も始まっています。

御予約の早い方から良席が消えて行きます。

気になる方はお早めに!!

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2011/01/02

謹賀新年2011

あけましておめでとうございます。

松枝佳紀です。

2010年中に書かねばならなかったブログ記事なども沢山あるのですが、今はまず2010年総括および2011年の抱負などを書いておこうと思います。

2010年は大転換の年でした。

●演劇と劇団について

新国立劇場公演を終えた後から、劇団を中心としたやり方に苛立ちを持っていました。

その苛立ちがピークに達したのは2009年11月の番外公演においてです。「僕のやりたいこと」と「劇団のやれること」に、どんどん違いができてしまっていることに気付いたのです。

たとえば、2008年の8月の新国立劇場でやった「ルドンの黙示」を、僕は、僕の作品の最高峰と思っているのですが、あれを実現するためには、あの規模の予算、美術、スタッフ、劇場規模が必要で、それを実行するには劇団というのはなんとも心もとないものにすぎなく、実際、外部の魅力もあり集客力もある役者の参加に頼らざるをえませんでした。

なので「ルドンの黙示」以降の公演では、劇団員だけで、しかもアイドル劇団化しない方向で、「ルドンの黙示」的な大きなテーマを持った芝居をやることを目標として、がんばって活動してきました。しかし結論から言うと、これがなかなか難しかったというのが正直なところです。

劇団の主宰としては、所属する役者たちの集客力を伸ばすための努力もしてきたつもりです。

やり方が正しいかどうか分からないけど、僕としては映像に片足を突っ込んでいるので、そういう映像分野での露出を増やすことが、集客力のある役者を育てるためには急務と考えました。私費でマネージャーを雇い、劇団員の映画やテレビに対する営業を数か月しました。最初は難しくても、じきに効果は出てくるはず。そう思ったのですが、実際は金が出て行くばかりで、なかなか仕事の獲得に結び付かなかった。

結果、僕の資金が底をつき、マネージャーを雇うのは辞めました。

いわゆる役者を育てる方向としては、メソッド的なことを教えて演技力を増強する…と言うような方向もあるのでしょうが、演技力増強と、演者としての魅力を増すことは違うことだと思っています。いかに演技力がアップしたとしても、売れる役者、人を呼べる役者になれるわけじゃありません。

満島ひかりちゃんをみても分かりますが、役者の魅力とは、演技とかそういう技巧や技術の問題ではなく、その人の人間の奥底から湧き出でてくる三千年の汚水みたいなもので、それはいわゆる演技レッスン的な、明るく健全なことで鍛えられるものではないと考えています。

「4人の現役映画監督による実践的ワークショップ」を運営しているとわかるのですが、役者は自分の演技がどうかを知りたがるが、監督は一様にして役者には演技力ではなく魅力をもとめます。魅力ある役者と組むことは、芸術と経済を両立させる可能性があるからです。しかし、常に困るのは演技力を育てるやり方は多々あり指導することが可能なのですが、魅力を育てるやり方については定まった方法論が無いと言うことです。「よりよく生きよノタウチマワレ血反吐を吐け」と言うことしかできません。

そういう役者指導、劇団員管理、劇団運営に長いこと腐心し、そして限界と苛立ちを感じていました。 

脚本家・演出家としてはしたいことがあり、そして、それは満島ひかりクラスの役者と組むことですぐにも実現可能なことであり、しかし役者の成長を優先にする劇団の主宰としては、自分勝手なことをすることは許されず、自分のしたいこととは別のことをしなければならない。役者の成長を第一義においた公演を打たなければならない。その矛盾が僕をだいぶ苦しめました。

結果、僕の気持ちは、劇団公演ではなくて、プロジェクト文学を立ち上げる方向に向きました。

広田淳一、吉田小夏、谷賢一という才能と公演を打つことに非常な魅力を感じたのです。

人間、欲望がなければ報酬無き行動は続きません。僕は自分の欲望に素直になり、プロジェクト文学を自分の主に置き、2010年の劇団本公演は打たないことを決定しました。

プロジェクト文学は予想以上の好評を得、無事終了しました。主宰の4名は戦友と呼べる信頼の絆を得ました。4名それぞれに忙しいので、時間を調整するのは難しいですが、2011年、2012年とプロジェクト文学は続けていけたらなと思っています。

プロジェクト文学を実行している時の僕の欲望と快感が何であったかと言うと、それは脚本や演出の欲望や快楽とは別の、自分の仕掛けが人を驚かせ喜ばせることの喜びというか、おそらくそれはプロデューサーとしての欲望や快楽であったのだと思います。

一方で、劇団運営については答えが出たわけではありません。悩んでいました。正直にそのことを劇団員に話しました。僕は自分のしたいことだけをしたい。昨年父が死に、次は僕の番で、だから急がないといけない。僕のしたいことをしたい。しなければいけないことをしたい。そしてそのしたいことをする時に、劇団は、申し訳ないけどオモシになる可能性がある。そんな自分勝手なことを話しました。皆は話をよく聞いてくれて、その場でどうするかは答えは出さずに、皆がそれぞれどうするべきか、各自持って帰り、じっくり考えることになりました。

2010年のクリスマスを過ぎたあたりにどうするかそれぞれの答えが出ました。

劇団アロッタファジャイナは、松枝佳紀、ナカヤマミチコ、青木ナナの三人で続けて行くことになりました。峯尾晶についてはフリーになりました。安川については、すでに劇団を離れ、別の事務所で活躍をしています。

それぞれ立場は変われど、「やりたいことをやりたいようにやる」というクリエイティブの原点に戻りたいと思っています。まだ具体的に何をするかは決まっていませんが、余命がわずかであると想定したときに、回り道をしている暇はありません。やりたいことをやらないといけない。長い目でみていただき、応援していただけると嬉しいです。

●映画、シナリオライターについて

2010年の映画、僕のベスト1は「ノルウェイの森」です。そして次に来るのが「悪人」。僕は、2008年の春から夏にかけて、「悪人」の企画開発に関わり、その映画化の方向性を探り、プロットを書くと言う仕事をしていました。しかし、その年は、新国立劇場でやる「ルドンの黙示」に賭けたいと言う気持ちが強く、貴様何様という感じですが、途中で、降りさせてもらったという経緯があります。その代わり、「ルドンの黙示」には死ぬ気で関わり、僕自身の作演出作品としてベストの物にしあげることができたという気持ちがあります。とは言うモノの、大きな魚を逃したなと言う気持ちもあります。特に、「ルドンの黙示」で主役を張ってくれた満島ひかりが、映画「悪人」にも重要な役で出演しているのを見ると、ずるい、という気持ちになります(笑)。

演劇は好きですが、僕の中には、映画と言う浸透力の大きなメディアを使って作品を発表していきたいと言う気持ちが強くあり、また収入的にも映像は非常に魅力的です。

「悪人」を降りて以降、角川映画で西竹一陸軍大佐の生涯を描いた「硫黄島に死す」の映画化に関わり、これは第三稿まで書いたのですが、角川の政変で企画がぽしゃり消えました(気にいっている脚本なのでどこかで映画化できないものかと考えています)。その後、いまヒットしている「武士の家計簿」にも関わったのですが、脚本まではいかず、脚本協力というところで僕の仕事は終わりました。父の死という僕の個人的体験を元に書いたオリジナル脚本「夏休みなんかいらない」を金子監督と共に書き上げたのですが、これも映画化のめどが現状はまだついていません。他にも企画開発段階でつぶれた魅力的な多くの企画に関わってきました。

そんな中、何か自分の一人の手になる作品を早く世に問いたい。そのことを金子監督に相談したときに、金子監督に言われたのは、劇団活動を縮小し、シナリオライターとして本当にやりたいことに集中しろと言うことでした。そのアドバイスもあり、2010年は劇団活動を控えたと言うのもあります。

現在、金子監督と開発している某作品については、アドバイスをくれた金子監督の指導もあり、うまくいく公算が高いです。もちろん一筋縄ではいかないこの業界のことですからどうなるかわかりませんけれども、いま第一稿を書いておりなかなか面白いものができるのではないかと、僕次第なんですが(^^;、頑張っているところです。

そのほかにも、幸運な出会いがいくつかあり、仕掛かり品が何本かあります。

プロジェクト文学「太宰治」をきっかけに知り合いになった映画「人間失格」の監督でもある荒戸源次郎監督には大変お世話になっています。時代劇の脚本を書かせてもらいました。いわゆる剣豪物なのですが、かなり史実を調査し、そのうえで作り上げた脚本です。最近の時代劇にはないハードボイルドな毒のある内容の映画になりそうです。

また、他に知り合った監督方とたくらんでいる作品がゾロリとあります。

さらに、2010年は、シナリオライターとしても、もうすこしプロっぽくやろうと言うことで、事務所にも所属しました。DIPREXという事務所です。僕の大好きな海外TVドラマ「SUPERNATURAL」のジャパニメーション作品のなかの途中の1話を書かせてもらいました。また、DIPREXのキム社長は営業力も企画力もある人で信頼をしています。僕がなかなか近付けない仕事を持ってきてくれそうで、非常に期待をしています。

そういうことで、2011年は、2010年よりも、かなり忙し楽しい年になりそうです。

●それから…

勉強をしています。沢山の本を読み、沢山の映画や芝居を観、沢山の音楽を聞こうと思っています。インプットした分は必ずアウトプットをしようと思います。できるだけ、読書の感想、観劇の感想などはブログなどで文字にしておこうと思います。「ああ、面白かった」では、経験は血肉になりません。言葉にし、意識にし、体系化し、間違えて、指摘され、非難され、喧嘩して、そして何かを掴まなければ、経験は自分の使える道具にはなりません。

そう言う意味では2010年は沢山の悔いが残っています。読みたかった本を全部読めなかった。観たい映画、見たい芝居を全部観ることができなかった。書きたい作品を全部書くことができなかった。

2011年の目標は、より悔いのない1年に近づけるということです。欲望が大きければ悔いが大きいのも分かってます。分かってますが、それでもできるだけ、欲望をさらに大きくもちながら、やるべきことを、より効率的に、2010年よりも多く、果たしていきたいと思っています。

そんなわけで、2011年も、松枝佳紀、アロッタファジャイナをよろしくお願いしますm(_ _)m


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2010/10/27

満島ひかり結婚。僕は見合い。

松枝です。

満島ひかりちゃんが結婚した。

めでたい。

一度だけ石井裕也監督とも飲んだことあるけど

非常に魅力的な人物で、端々から才能があふれ出ていた。

石井監督の大学の先輩である熊切監督と話した時も「あいつは売れっ子監督になるよ」とお墨付き。

満島ひかりは、女優としてはもちろん、クリエーターとして、人間としてともに成長できる相手をしっかりと選んだ。

そういう子なんですよひかりちゃんは。

ますます素晴らしい演技を見せてくれることでしょう。

  
そんななか、僕も発表しようと思います。

結婚のちょっと手前、なんと「お見合い」をします。

詳細は以下。

■15 mm Salon Volume4(15ミニッツ・メイド・サロン・ヴォリューム4)  (~15mm10チケット発売記念! 『project BUNGAKU vs 15 minutes Made』~)

●内容:僕、松枝佳紀の企画「プロジェクト文学、太宰治」は予想以上の大好評でした。しかし、いくつかの劇団が集まって短編を発表するオムニバス形式の公演は以前から小劇場界では活発にやられていました。なかでもMrs.fictions(ミセス・フィクションズ)が手掛ける「15 minutes Made(15ミニッツ・メイド)」は今年12月でなんと10回目を迎えるいわば小劇場界オムニバス公演の老舗です。で、その10回目の15ミニッツメイドを記念して、今回、僕がゲストになり、Mrs.fictionsの主宰今村さんとトークバトルを繰り広げることになりました。僕的にはかなりぶっちゃけるつもりです。ぜひ話を聞きに来てください。Ustreamで生中継もする予定らしいですが、中継されたら困る話もあるので、その時は中継を止めてもらいますので、ぜひともトークの全貌を聞きたい人は足をお運びください(笑)

●日時:2010年10月31日(日曜日)20時開場、20時半トーク開始予定

●場所:池袋シアターグリーン1F『storia』
     (豊島区南池袋2-20-4、03-3983-0644)

●料金:入場無料(1ORDER制)。出入り自由。

●今村さんの言葉:15mm Salonは劇場という『場』に集まり、公演よりももっと気軽に人と人とが交流する企画です。 過去15mm参加者はもちろん、お客さま、役者、スタッフ、演劇に興味のある方でしたら誰でもお気軽にご参加下さい。一緒に飲み、話しましょう。 劇場が、もっと身近な場所になるように。人と人が出会い、議論が始まりますように。小劇場演劇界がより活性化していくために、ゆったりした場をご用意致します。第4回目となる今回の公開討論は『project BUNGAKU vs 15 Minutes Made』。先日大好評のうちに幕を閉じた短編演劇オムニバス公演project BUNGAKUの仕掛け人である松枝佳紀さん(アロッタファジャイナ主宰)をゲストにお迎えしてお互いの企画について歯に衣着せずに討論致します。オムニバス公演の役割について、観客へのアプローチ、そこから見えてくる今後の小劇場の形とは? 短編演劇界の新参者である『project BUNGAKU』絶賛の嵐に正直悔しい思いを噛み締めたMrs.fictionsが、噛み付いて参ります。
※当日のインタビューはUstreamで生中継する予定です。
※10月31日(日)は15 Minutes Made Volume10のチケット発売開始となります。当日会場にてチケットをお買い求めのお客様に、ドリンクを一杯サービスさせて頂きます。


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2010/10/25

写真、その二

ProjectBUNGAKU写真の続きいきます。

アフタートークゲストと4人の演出家写真の紹介途中でしたね。

こないだは五日目夜ゲスト奥秀太郎さんまででした。

では公演六日目。

六日目のお昼のゲストは高野しのぶさんでした。

Photo

高野しのぶさんの肩書は「現代演劇ウォッチャー」

そして、「しのぶの演劇レビュー」という観劇ブログ&メルマガを発行されています。

この「しのぶの演劇レビュー」はおそらく現在日本一手軽にアクセスできるそして日本一網羅的な、日本を代表する演劇紹介サイトではないでしょうか。

その高野しのぶさんが選んだのは、広田淳一演出「HUMAN LOST」でした。

これとても面白いことですね。

昨日のブログ記事にあるように、今回観客投票最下位は「HUMAN LOST」だったんですが、太宰治のお弟子さま小野才八郎先生、演劇界の重鎮永井愛さん、そして演劇に目の肥えた高野しのぶさんが「HUMAN LOST」を推している現実。

広田さんは、専門家からは評価されるが一般大衆から人気が無いという、演劇界の小沢一郎みたいなことになっていますが、ぼくはこれね、大変面白いことだと思っています。また、予想されたことでした。さらに言えば、観客投票と専門家投票をやってその違いを明示すること、これは僕の最初から念頭に置いていたことでした。しかし、そのことが指す意味については今は簡単には記述できないので、また別の機会に試みたいと思います。

ちなみに写真が滲みまくっているのは、岡田瑞葉ちゃんの編み出した新撮影の手法アナログフィルターの成果です。アナログフィルターは別名「たんなる手ぶれ」とも言うようですが、読んで字のごとく、撮り返しのつかない事態になっています。二度とあのときはもどってきません。ちなみに、今回も広田さんが一番高速で移動しているように見えるのは、ご本人を知っている人なら納得の、彼特有の落着き無さが原因と思われます。

冗談はさておき・・・

六日目の夜のゲストは、超絶美女、原紗央莉さんでした。

Photo_2

モザイクをかけたいです。僕の顔に。もうしわけないですが、一生分ニヤケテしまいました。原紗央莉さんが選んだのは、僕でした。作品ではない。僕を選んだ。…と思いたい。思わせて。というか僕は原紗央莉さんに選ばれるんじゃないかという予感はありました。事前に原紗央莉さんの自伝「本名、加藤まい」を読んだときに、そう思ったのです。

原 紗央莉: 本名、加藤まい ~私がAV女優になった理由~
原 紗央莉: 本名、加藤まい ~私がAV女優になった理由~

そして、その予感は的中し、原紗央莉さんに僕の「ヴィヨンの妻」を選んでいただいたのです。選んでいただいた理由のキーワードは「実体験」です。当日来ていただいたお客さまなら分かると思いますが。

にしても、僕は、猪瀬直樹さん、奥秀太郎監督、原紗央莉さんと選ばれるべき人に選んでもらっていて・・・本当に4演出家は4様の色があり、観客投票はともかくとして面白いなあ。

原紗央莉さん、当日の模様をブログに書いてくださっています。

原紗央莉さんのブログ

僕の妹はさおりんの大ファンで、当日も観に来て、いろいろプレゼントを渡していました(^^;

そして次の日。

七日目は夜公演だけで、その時のゲストは辛酸なめ子さんでした。

Photo_3

吉田小夏さんの「燈籠」が選ばれました。辛酸さんも本当に面白くて、そのトボケタトークで会場は沸きました。

辛酸さんは独自の視点で普段からコラムを書いたりなどしていますが、漫画家でもあって、可愛らしい絵を、小夏さんへ送る色紙に書いてくれました。

で小夏さんは、女優の三田佳子さんにつづいての受賞だったのですが、イメージとして可愛らしい女性から評価されるような気がしますね。作品も、いつもそうだと思うのですが、否が応にも「女性」を突きつけられる作品で、今回の「燈籠」も見事にそういう作品になっていて、だから、そういう作品にシンパシーを抱きやすい少女な心を持ったゲストが吉田小夏さん「燈籠」を推す…というような傾向があるような気が、僕は勝手にしています。

で、まさに、辛酸なめ子さんは少女であったなあと。思うわけで。

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2010/10/24

罰ゲーム

「ProjectBUNGAKU太宰治」をガチの勝負の場にしたい。

というのが最初の会議での広田さんの発言でした。

複数劇団の短編コラボ企画は、仲良しになることを目的とした馴れ合いの企画となりやすい…という危惧が広田さんの発言の根源にはあったように思います。

短編といえども長編を作るぐらいの気合いとコストをかけて作り、ガチで勝負をしたい。

決して、それぞれの作品を、それぞれの劇団の特徴を詰め込んだCMにしない。ちゃんと作品として提出する。

そのために、この企画の場を、たゆまぬ努力を最後までせざるをえなくなるようなガチの勝負の場とする…競争を導入したい。

そんな発言を広田さんがされた時、谷くんは「喧嘩上等」と口角泡を飛ばし、しかし小夏さんは、演劇は競争するためのモノではないと反対を表明。

しかし広田くんは、ガチ勝負という条件を飲まないなら参加はしないと強硬発言。

もし競争を受け入れるなら…と考えた小夏さん。

「負けた演出家は、それぞれの情人を連れて、太宰みたいに玉川上水に飛び込むって言うのはどうかな」

やるとしても、そんぐらいのウィットが無ければやりたくない、ということでしょう。

そして、その小夏提案に爆笑大受けした4人の演出家はガチ勝負、負けたら入水自殺ということを企画の肝にしようと決めたのでした。

しかし…

今回の企画を進行するにあたって、製作総指揮である僕は沢山の人と話すことになるのですが、とくに、太宰治の御親族のかたがたや、アフタートークにも来て下さったお弟子さまの小野才八郎先生とお話ししたりするうちに、「負けた演出家は太宰を真似て玉川上水に飛び込むことになるんですよ、おもしろいでしょ、あはは」とはなかなか言えない状況になってきました。

だって、考えても見てください。

ぼくらあなたのお父様(お師匠さま)を尊敬していますから、今回勝負で負けた演出家はあなたのお父様(お師匠様)の自殺を真似た罰ゲームをするんですよ、あはは面白いでしょ?なんて残された息子さんや娘さん(お弟子さん)に言えますか?

企画を進めて行くうちに、僕が直面したのは、太宰治の死は歴史なんかにはなっておらず、ある人たちにとっては癒えることなく昨日の傷のようにヒリヒリと痛み続ける事件だってことでした。

で、「玉川上水に飛び込むって罰ゲームはやめましょうよ」僕が恐る恐る言い出したのでした。

最初は、「最下位になることを恐れてヒヨッタか松枝」的な感じでしたが(笑)、広田くんなんかも、太宰関係の書籍を読み進むうちに、とくに松本侑子さんの著書「恋の蛍~山崎富栄と太宰治」を読んだ後に、僕の言ったことを納得してくれました。

松本侑子さんの御本は、死んだ山崎富栄の真実が書いてある優れたご著書なのですが、これを読んだら、やはり軽々に彼らの死をもてあそぶような罰ゲームはすることができないのです。そう気付きはじめた4人の演出家。

ただし、本気競争が必要というのはやはり前提でした。

が、どんどん忙しくなり罰ゲームについては、代案を考え出せないまま、本番の幕が開けてしまいました。

とは言うモノの、罰ゲームは無くとも、広田くんの最初の提案通り競争は僕らを最後までたゆまぬ努力に追い込みました。千秋楽公演の寸前まで改善の努力は続けられたのです。

幕が閉じました。

勝ち負けの付け方についてはいろいろ議論もあったのですが、お客様第一ってことで、観客投票の結果によってこれを決めることに決めました。

だけど、罰ゲームについてはまだなにをどうするか決まっていませんでした。

そんなある日、深夜に広田くんからの電話がありました。

「面白い罰ゲームを思いつきました。これを越える罰ゲームはなかなかないんじゃないでしょうか?」

そして、ProjectBUNGAKU太宰治の罰ゲームは敢行されたのでした。

以下、その模様を映像にてご覧ください。

良い子の皆さんは真似しないように。


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