2015/06/17

写真家・所幸則さんと私

僕はふだん演劇を生業にしている。映画もちょっとやってる。そんな僕が写真家・所幸則さんを知るようになったのは、2010年11月22日である。twitterで所さんに話しかけていただいた。
 
そのころの僕はtwitterにハマりまくっていた。1日50回ぐらい、ときに100回近く熱心にtweetをしていた。情報を発信すること、旗を挙げることに意味があると思っていた。twitterという新しいコミュニケーションツールに期待をしていた。これまで開けなかった何かを開く可能性があると期待をしていた。なので依存症のようにtwitterにハマることを自分に許していた。
 
所さんが僕にとばした最初のtweetは所さんの勘違いに近いtweetだった。たぶん事故だ。それでも所さんが声をかけてくれたことで、僕は所さんの存在を知った。twitterカウントのプロフィールをたどり、所さんのHPにたどりついた。そして、所さんの作品群を目にすることになった。
 
所幸則さんのHP http://tokoroyukinori.com/
 
所さんが初めて僕にtweetしてくれたのが深夜の1時30分。その30分後の2時ちょうど。僕は次のようなtweetを所さんに向けて飛ばした。「遅ればせながら、先ほどHPで見させていただいたのですが、所さんの撮られる写真やばいスね。素敵です。」魅了された瞬間だった。以来、一貫して、僕は所さんの作品に魅了されている。
 
所さんの作品の魅力。とくにone-secondというコンセプトによる写真群の魅力。それは端的に言うと、「ロゴス的」であるということだ。
 
人間はリンゴを見てリンゴをみるわけじゃない。リンゴを見て、その酸っぱさだったり、シャリシャリ感だったり、あるいはその硬さ、重さ、痛さ、凶器性を感じるかもしれない。あるいは大きさ、あるいは木々、森、産地、農地、アダムとイブ、ニュートン、ウィリアム・テル、リンゴのある食卓で目にした夫婦喧嘩の記憶、映画の中のワンシーン、車にはねられた主婦のカゴから転がるリンゴ、しゃりっと噛んだ断面にうねうねと顔を出す幼虫、血のしたたる取りだされた心臓、魂、21グラム・・・。人間は物を見て概念を取り出す。神の言葉「ロゴス」を探る。
 
アイドルのグラビア写真は典型的だが、あれは写真家の存在がほとんど無色透明だ。無色透明であることを求められている。グラビア写真を観たい人たちは被写体であるアイドルを観たいだけ。間違っても、写真家のアーティスティックな主張なんて見たくない。だから主張のあるグラビア写真なんてたまにあるが、amazonなんかでは不評の嵐だ。
 
グラビア写真の対極にあるのが所さんの写真のような気がしている。それは世界解釈の意志に満ちた写真だ。映る少女は、少女自身を離れて、社会の冷酷な風にさらされ、不安を抱いてそこに立つ。写真は少女ではなくて、社会そのものを描く。あるいは社会を動かしている冷たい風を、熱い欲望を描く。所さんの写真に出会った時に僕は閃きの雷光に打たれた。
 
2010年の暮れ、僕はtwitterにハマっていることもあって、社会の矛盾や問題に直面し、またそれを変革する欲望にも直面した。twitterが世界を変えるかもしれない。少なからぬ人たちがそう思っており、僕もその可能性を感じていた。グラビア写真のような演劇には飽きていた。社会変革たる演劇が必要だと感じていた。そう考えていて、演劇をする先輩や仲間をまきこんで、「日本の問題」という舞台を企画した。既に名のある8劇団、学生劇団6劇団計14劇団を集めて、それぞれが「日本の問題」と思うことを短編の演劇で描き、それを様々な識者に見ていただき、一緒に考え世間に対して問題を提起していこうというような公演を企画していた。
 
 
だから、社会や国家を描きうる所さんの写真に出会った時、「日本の問題」のメインビジュアルはこの人に撮ってもらうしかないと思ったのだ。
 
年明けて、2011年2月15日、僕はその依頼を所さんにメールした。予算があまりないこと、しかし、今この演劇「日本の問題」をやることには意味があること。そしてそのメインビジュアルは所さんの新作写真を除いては考えられないこと、などを伝えた。所さんは快諾してくれた。
 
2011年3月11日、東北を大地震が襲った。福島の原子力発電所がメルトダウンした。その波を「日本の問題」もかぶらざるを得なかった。メインビジュアルも、たとえば、実際の被災地に行って撮影をしようかというような案も出た。原発の写真こそが「日本の問題」を象徴する絵なんじゃないかというような意見もあった。しかし、結果として、所さんが撮り、僕が選んだのが「東急東横線の少女」という写真だ。
 
Photo
 
写真には一人の少女が映っている。出発を待つ車両の中、不安に携帯を持つ少女。彼女の不安に目を止めることなく行きかうサラリーマンや主婦などの大人たち。彼らは皆ゴーストのように映っている。そして向こうには不吉な渋谷の空。
 
意図したものではない。グラビア写真のように、そこにあるものを撮っただけだ。だが、それが所幸則という写真家の撮る写真のロゴス的である所以なのだろうが、ここに映っているのは、まぎれもない「日本の問題」なのだ。満員電車が問題とか、少女の孤独が問題とか、そういう個別のことではない。ここに写ってるのは、もっともっと抽象的でまさにロゴスとしか言いようのないもの。社会の問題であり、国家の問題であり、いままさに我々が直面している全てが包摂されている。事故った原発の写真にしなくてよかったと思う。もしそうしていたら、その写真の意味するものは「日本の問題」ではなくて「原発の問題」にすぎなくなる。
 
僕は所さんの写真が好きだ。2014年3月、チェーホフの「かもめ」を舞台にかけたときにも、写真を新しく撮りおろしてもらった。舞台でヒロインのニーナを演じるダブル・キャスト、当時15歳の宇野愛海と当時25歳の縄田智子の2人をモデルに撮影をした。
 
Kamome_2
 
写真には2人の少女が映っている。深い森の中で戯れる2人の少女。天からは祝福の白い羽根が無数に舞い落ちてきている。そして、その表象は所さんの手にかかるとロゴスとなる。少女の無垢性、悪魔性、生命の美しさと儚さ、そして無邪気な少女の欲望。舞台「かもめ」で僕が最もクローズアップしたかった「概念」がそこにあった。この写真も、まさに所さんの写真のロゴス性が発揮された作品であると思う。
 
そして同年8月、新国立劇場で佐野史郎さんを主演に向かえて披露された「安部公房の冒険」という舞台。このときにも所さんの写真を使わせていただいた。しかし、これまでの2作品とは異なり撮りおろしではない。以前、所さんの個展を観に行って僕がどうしても欲しくなり購入したプリントを使った。
 
Abekobo
 
「安部公房の冒険」の脚本を書き終わって、宣伝美術をどうしようかなと考えていた時に、部屋に飾られたその写真が目に入り「これこそ」と閃いた。安部公房という稀代の作家の作風。その無機質性、コンクリートな空間。その硬質な世界の中、ただひとり、孤独に耐えてそこに居る美しい生身の女性。僕の買ったその写真は舞台「安部公房の冒険」で僕が描こうとしている「概念」そのものだった。
 
なんども言うけれども、僕は所さんの写真に魅了されている。所さんの写真は、他の写真や絵や物語では得られない快楽を僕に与えてくれる。それは知的な快楽だ。世界を解釈することの許された神の言葉ロゴス。その聞こえない音を耳にする禁断の快楽とも言って良いだろう。そして、今日も、僕はその美しい言葉を聞くために、所さんの写真を眺める。僕はこれからも、所さんの写真に飢え続ける宿命なのだ。
 
----

その所幸則さんが、新作の写真集を出すためにクラウドファンディングをしている。

https://greenfunding.jp/lab/projects/1083
もうすでに145万円あつまっている。
けれども、ぜひ、所さんの写真に興味を持った方は、参加し新しい写真集を手に入れられてはどうかと思う。お勧めします。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/07/03

「安部公房の冒険」

 ようやく、2014年8月公演の情報を公開できる日がやってきました。と言っても、ちょろっとだけですし、ホームページはまだ「かもめ」のままなんですが。

 8月23日から同月31日までの9日間、新国立劇場小劇場で公演をうちます。
 
 題して安部公房の冒険
 
 三島由紀夫などと並ぶ昭和の文豪安部公房 のいくつかの逸話をベースにして虚実ない交ぜの人間ドラマを展開する予定です。
 
 劇団の本公演はいつも僕が演出をするのですが、今回は特別。現在僕が敬愛してやまない稀代の名プロデューサーにして映画監督の荒戸源次郎 氏に本作の演出をお願いをしました。
 
 そして、出演者は次の4人です。
 
 
 出演を僕と荒戸監督が熱望したとはいえ、高校時代にひょんなことで見て衝撃を受け忘れられぬ映画の一本となった林海象監督の「夢みるように眠りたい」や、金子修介監督の手がけた名作の中の一つ「毎日が夏休み」などに主演した、あの佐野史郎さんと、このように一緒に作品を作れる日が来るとは思ってもみませんでした。しかも、非常にタイトなスケジュールの中、脚本を気に入っていただき万難を排して出演をしていただいたという光栄な展開。佐野さんの過去の名作、林監督や金子監督の名作とならぶ…いやそれ以上の魂にひびく作品とするべく演出荒戸源次郎監督ともども頑張りたいと考えています。
 制作さんは、新しい方と組ませていただきました。
 なぜならうちの制作はDULL-COLORED POPの「河童」で踊っているから…。

 美術:坂本 遼、衣裳:伊藤摩美、音響:筧 良太、
 照明:柳田充(Lighting Terrace LEPUS)、
 ヘアメイク:清水美穂(
THE FACE MAKE OFFICE)、
 舞台監督:本郷剛史/青木規雄、宣伝美術:ナカヤマミチコ、
 制作助手:平岩信子、制作:山川ひろみ
 
 劇団公演としては3回目となる新国立劇場小劇場公演です。1回目の「ルドンの黙示」は出演者36人、2回目の「国家~偽伝、桓武と最澄とその時代~」は出演者28人、そして3回目の今回は出演者4人。結構「冒険」してます。安部公房の冒険じゃなくて松枝の冒険としても良いぐらいに冒険してます。
 
 そして見どころが非常に沢山ある。必見の公演になります。なると思います。なにがどうなのか。いろいろ語りたい。ですが、今日のところは、このぐらいに。また書きます。続報をお待ちください。チケット発売は7月18日正午からです。
劇団ホームページはこちら→http://www.alotf.com/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/11/28

チェーホフからの手紙

私たちには手近な目標も、遠い目標もありません。

心の中は、球でも転がせそうなほど、空っぽです。

私たちに政治はない。

革命もない。

神もなければ、幽霊も怖くは無い。

死も盲目も怖くは無い。

何も欲せず、何ひとつ希望も持たず、怖いものなど何もない。

そのような人間が芸術家になれるはずがない。

これが病気であるのかないのか。

呼び名はどうでもいい。

ただ、私たちの立場が都知事の比ではないほど悲惨であるのは認めざるをえません。

1892年11月25日

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/04/04

2012年4月の今、目撃しておくべきもの。

4月6日金曜日

DULL-COLORED POP 第11回本公演
「くろねこちゃんとベージュねこちゃん」

の14時の回のアフタートークに出演します。

この作品は、劇作家・演出家の谷賢一氏が率いるDULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)という劇団の第11回目の本公演で、前回の第10回が再演であることを考えると、2009年8月の第8回公演「マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」以来、2年8か月ぶりの書き下ろし脚本による劇団本公演じゃないかと思います。

2年8か月ぶりとは言っても、小劇場界隈の人々はよく知っているように、この間も、谷賢一氏は、演出家として、劇作家として目覚ましい活躍をしており、ますますその作る作品のレベルと評判は高まっています。

演出家としては、世界の演劇を照準にとらえた冒険をしながら、しかし、沢山の人々に物語を手渡す丹念な作業を怠らない稀有な演出家であり、また劇作家としても、その取り繕って生きる人間の内側を暴いて見せるランセットの鋭利さはますます際立っており、観る者も血を流す覚悟を持たねばならないおそろしい脚本を書く作家であり、将来世界的な劇作家として名を残すかもしれない匂いをプンプンさせている人です。

小劇場界隈の人は谷賢一が何者かはもう知っているはずですから、僕は、それ以外の世界の人々に彼の作品をぜひぜひ観て欲しいと思っています。

もしよろしければ、観に来てください。

いま目撃しておきましょう。

谷賢一の芝居を。

そして劇団DULL-COLORED POPの芝居を。

2012年4月の今、目撃しておきましょう。

ぜったい損はないです。

てことで、4月6日14時開演の回、小竹向原のアトリエ春風舎で会いましょう。

---
DULL-COLORED POP vol.11『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』
場所:アトリエ春風舎(板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1)地図
アクセス:東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原駅」 下車4番出口より徒歩3分
日時:4月6日14時開演
チケット:前売り2,500円、当日3,000円、学生1,500円(前売りのみ取り扱い/受付にて要学生証提示)
チケット予約こちら


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/27

長塚圭史演出「ガラスの動物園」

長塚圭史さんの演出するテネシー・ウィリアムズの自伝的作品「ガラスの動物園」を見てきた。

もちろん、ミーハーな僕であるから深津絵里、瑛太という出演者に惹かれての観劇だが、長塚圭史さん演出というのも重要。

8人のダンサーによる不気味さの表現が秀逸。花沢健吾「アイアムアヒーロー」的な不気味さを演劇でやったと言う感じ。立石涼子のお母さんが「おかん」だった。この芝居はおかんに支えられている。

そして何よりも、特筆すべきは、深津絵里と鈴木浩介の息を飲むやりとり。なんだろう、これだけで見る価値がある。

決して表現形態としてリアル(現実のありのままの模写)というわけじゃない。深津絵里の演じ方はいろんな意味で過剰で、見ててちょっと嫌になる一歩手前だが、その腐りかけのギリギリで最高の風味を醸し出す肉のような芝居は「最適」であるという科学的な言葉を使いたくなるほどに、そこにしかないであろう真実を表現するにふさわしく、また一部もずれることを許さない微妙なラインを攻めている。内実のリアルを担保するために許される演劇的な過剰の狭い狭い許容範囲ギリギリを攻めている。そして、その狭いマトを的確に射抜く深津絵里の芝居の過剰さのおかげで、万人がいれば、ほぼ万人がローラの出会う感情の波を一緒に体感することになる。喜びの鋼がぼろぼろと崩れて行く様を手に取るように見ることになる。

最近、僕は演劇にはストーリーではなくて、その「波の顕れ」に出会いたくて行っているので、まさに出会ってしまったと言う感じ。

テネシー・ウィリアムズは、「ガラスの動物園」を「追憶の芝居」と言っている。主人公であり、テネシー・ウィリアムズ自身でもあるトムが、実姉と実母への追憶を後悔と共に語る。

しかし、その作者の意図を越えて、コクーンの舞台の上にある深津絵里と鈴木浩介の芝居は、生々しかった。演劇的な虚実の向こうに浮かび上がる本当のリアルが、追憶という形式をぶち壊すほどに観客の胸に迫る。

あるいは「追憶こそリアル」。という演出の意図があるのかもしれない。

というのも、「追憶」は追憶者(=経験者)による経験の都合の良い情報整理と考えられ、それは大概、「紗幕」の向こうのドラマチックな思い出となるが、今回の芝居はこれが逆転している。つまり「紗幕」の向こうにあり美しく整えられているのは「過去の経験」ではなく、「追憶者本人」の「現実」なのである。すなわち「現実」こそが彼岸にあり、追憶者であるトムは気持ちよく過去を追憶するやもしれないが、「紗幕」のこちら側にいる観客は、過去を忘却するどころか、忘れ去られたはずの「過去の痛み」とともにこちら側に置き去られる。そのように演出されている(ちなみに台本通りなのかもしれないが、現在手元になく確認できない)。

「追憶」されるべき「過去」が追憶しようもないほどにリアルにそこにある。

そうだとすると、あのダンサーたちも「そうなのではないか」と思えてくる。

過去を忘却し美化しようと言う働きを許さぬ妖怪たち。忘れようとしているそばから、彼女たちは「過去」を引っ張り出してくるのである。なぜならば彼女たちはトム自身の「目玉」であるからだ。見た物は見た。忘却を許さないトム自身の無意識=目玉こそがあの8名のダンサーのような気がする。だから彼女たちはやたら大きな目をしていた。「見ているぞ」というわけである。

というわけで、この長塚圭史版「ガラスの動物園」は忘却しようにも忘却しえないで追いかけてくる記憶たちの話と言っても良い。しかし追憶。ノスタルジーという優しい訳語があるが、字面通り、逃げても逃げても「追」いかけてくる記「憶」ということの略とすれば、長塚圭史版「ガラスの動物園」は、まさに「追」「憶」の話なのである。そのように僕は見た。

ちなみに、鈴木浩介演じるジム・オコーナーだが、彼も病んでいる。「J・エドガー」に描かれるアメリカの中心にある病・・・「健全であれかしという病」に犯されている。話し方教室に行き快活な話し方を学ぶと言うことがいかに病んでいるか。と言う意味で、このような4人芝居を作り出したテネシー・ウィリアムズ恐るべしと思うのである。

S席9000円払っても惜しくは無い。4月3日まで渋谷シアター・コクーンにて。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/24

音楽劇「銀河鉄道の夜」

4月8日の1日だけですが、芝居を披露をします。

ピアノ、チェロ、歌がライブで入る、ちょっと贅沢な総尺1時間の短編音楽劇です。

無料です。

神谷町にある由緒正しきお寺さん青松寺の「花まつり」のメイン・イベントとして披露されます。

ご近所の子供たちも来るらしいので、子供たちの心に何かを残せる芝居になればいいなと思っています。

(ちなみに宮沢賢治って作詞・作曲してるんですね。いい歌なんです。)

13時開演と16時半開演の2回のみ。

よろしければ足をお運びください。

音楽劇「銀河鉄道の夜」

原作・作詞・作曲:宮沢賢治

脚本・演出:松枝佳紀

出演:西村優奈、縄田智子、寺田有希、ナカヤマミチコ

演奏:小栗慎介(ボーカル)、ゆりまる(ピアノ)、小林幸太郎(チェロ)

協力:清川あさみ(絵)、リトルモア(出版)、シネ・フォーカス(技術)

プロデュース:佐藤 政(ストーリー・レーン)、福田一博(アズムプロダクション)、南 慎一(OFFICE H.I.M.)

会場:青松寺(港区愛宕2丁目4番7号、03-3431-3514)

行き方:

(1)地下鉄・日比谷線、神谷町駅3番出口より徒歩8分(3番出口地上を出てすぐ左折、ずんずん道なりにしばらく進みます。左手に高くそびえる愛宕グリーヒルズを左折します。まもなく進むと左手に「青松寺」の門がみえます。そこをお入りください)

(2)地下鉄・三田線、御成門駅A5出口より徒歩5分(A5出口を地上に出て、後ろ、ローソンのある方に進みます。道なりに行くと歩道橋があります。登り、通りを渡り右折します。まもなく進むと左手に「青松寺」の門がみえます。そこをお入りください)

----

銀河鉄道の夜の主人公ジョバンニは言います。

「僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸《さいわい》のためならば僕のからだなんか百ぺん灼《や》いてもかまわない」

自分を犠牲にしても誰かのために生きたい。

それは作者宮沢賢治の思いでした。

しかし「誰かのために生きたい」という気持ちは宮沢賢治のような聖者だけが持つものなのでしょうか。

たしかに人間は誰もが「毎日を楽しく過したい」と思っています。

けれども同時に「自分を犠牲にしても誰かのために生きたい」という思いもまた誰もが持っている。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」はそのことに気付かせてくれます。

今回の音楽劇では、幼い子供でも楽しめるような楽しい芝居と豪華な演奏、楽しい歌を楽しんでいただきながらも、洞窟の奥に眠る宝石を掘り起こすように、心の中に眠る「誰もが持っている尊い想い」に気付くことのできる。そんな「劇」にできればと思ってます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/13

「日本の問題Ver.311」終幕

「日本の問題Ver.311」全日程終了致しました。

ご来場いただいた観客の皆さま、座談会に参加していただいたゲストの皆さま、快く脚本を提供してくださった広田さん、瀬戸山さん、蔭に日向に企画へのご意見をくださった皆さま、本当にありがとうございました

震災から1年目という区切りに、皆様と同じ時間を過ごし葛藤したことは、僕らにとって大変意義のある事となりました。皆様にとりましても、本企画に足を運んでいただいたことが、なにかしら意義あることであったと感じていただければ大変うれしいです。

この「日本の問題」と題した公演は、昨年11月の「日本の問題(小劇場版)」、同12月の「日本の問題(学生版)」、そして今回の「日本の問題Ver.311」と、3回目となる企画です。しかしながら、今回ほど、お客様から積極的に沢山のお言葉をおかけいただいた公演は初めてでした。

賛否両論あれども、「企画に対して」、「演目に対して」、「前説に対して」、終演後、積極的に、お声をかけていただき、大変熱いご意見を、多数のかたに、お聞かせいただくことができました。それは通常の公演を考えると異様なほどでした。

これは、4劇団の演目および前説がお客様のご意見を誘発するような内容を持っていたこともさりながら、ご来場いただいた皆さまにとっても「東日本大震災」が底知れぬ心理的ダメージを与える事柄であったということの証左ではなかったかと思います。あれがなんであったのか、なんであったと捉えるべきなのか、目の前の悲劇を差し置いて自分らは幸せであってよいのか、いったい自分はなんなのか、そのような根源的なことを、語り、表現し、自分たちで何かを納得しないと前に踏み出せないほどに、観客の皆さまも、そしてぼくらも、あの震災から強くダメージを受けていたのだろうと思います。そういう意味で、震災に関する表現欲求は、僕ら企画側だけにではなく、観客の皆さまにもあったのだろうと思うのです。

願わくば、今回の企画が、観客の皆さまや僕らを含めた参加者それぞれの心の中にあった傷を癒すものとなり、癒された後は、まだまだ続くであろう被災地の復興に対して、直接的に、間接的に、関わり続けていくきっかけのひとつとなったら幸いです。僕自身も関わり続けます。沢山いただいたお言葉(批判であれ何であれ)を真摯に受け止め考え、明日からの表現に必ず活かしてまいります。

事前に告知しておりましたように、本公演の収益金および寄付金、総額29万1千619円は、あしなが育英会の「東日本大震災・津波遺児支援」事業に、本日、3月13日、全額寄付させていただきました。

ご来場いただきました皆様、関わってくれた皆様、ありがとうございました。


「日本の問題」代表 松枝佳紀

Photo_2


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/06

「日本の問題Ver.311」プロデューサーとして

以下はさっき書き上げたプロデューサーとしてのあいさつ文です。
当日パンプレットの印刷に間に合うかどうかわからないので、ここに載せておきます。
本日初日です。11日までやっています。お席ありますので当日でもいいので見に来てください。
最後の座談会含め2時間です。

---
本日はご来場いただき、まことにありがとうございます。
本公演を企画し、参加する学生劇団の皆を生あたたく見守る役目のプロデューサー松枝です。
さて、古来より、日本人は、言葉を短くし、そこに長大な意を込めることに長けていますが、僕としましては、本企画のタイトルに「Ver.311」と入れたのを後悔しています。
「311」(サン・イチ・イチ)という言い方は、まぁなんと言いましょうか、逃げですよね。
「逃げ」といいますか、なんだか1年前に起こったことを直視しないですむための言葉というか、「Ver(バージョン)」なんていれることで少しおしゃれにすらなっている。
僕は、こんな言葉を使ってしまったことを「恥じ」ます。
恥じる・・・と言って、誰に対して恥じるのかなと考えました。
それはきっと、あの大震災で命を落とされた沢山の人たちに対してかなと思います。
また、いま生きて、悩み苦労して「損失」から立ち直ろうとしている被災者にたいしてかもしれません。
そのように必死で生きたかった、あるいは今生きている方たちに対して「Ver.311」などと気取った言葉を使い悦に入っている自分たちのことを恥じるのです。
なにもタイトルだけではありません。
学生4劇団の作り手のみんなは、日を追うにつれ、自分たちの「表現に困難を感じたのではないかと思います。
死者に対して、被災者に対して、僕らはこんなことをこんな風にしてやっていていいのだろうかと。
いつもの公演では味合わないような苦痛を創作が進行するにつれ味わったのではないかと想像します。
が、あらためて考えると、「表現」というものは、なにもこの震災企画に限らず、いつも「現実」に対する「恥じらい」を持たなければならなかったのだとも思います。
昨年、「日本の問題 学生版」というのをやった時、多くの人が、良い意味でも悪い意味でも、今時の学生は自分たちのことにしか関心が無いのだなと感想を持たれました。
あれから3カ月後の今回はどうでしょうか。
僕は、創作の過程で、学生たちが、被災地に行き、被災者に出会い、被災地のことを学び知ったのを知っています。
少なくとも、僕は、彼らが、本企画に参加しなければ出会わなかった「現実」の「痛み」に手を触れ火傷をしたのを知っています。
この三カ月の重さは半端が無かったと思います。
そういう意味では、僕は胸を張れます。
彼らは創作家にふさわしく、「現実」の凄さを知り、それに対して表現の無力さを知り恥じらいながら、しかし、強くそれを乗り越えて今ここに「表現」をしようとしている。
そのことを、僕は、泣きたいくらい、誇らしく思います。
で、終わり。という訳ではありません。
「現実と戦った」というだけでは、偉いね、頑張ったね、ということ「だけ」だからです。
残っているのは皆様に見られることです。
観客の皆様に見られて、「表現」としてそこにあっていいかどうかを判断してもらわないといけません。
どんなに「現実と戦った」ってその表現が拙ければ、表現者としてはダメです。
だから、今日は最終審判の下る日です。
全公演にアフタートークがついているのはそういう意味です。
皆様に置かれましては、彼ら、彼女らの苦闘に思いをはせながら、しかし、観客として厳しく彼らの芝居を見てやってください。
それは見る側の義務です。
あの犠牲者たちは、命を失い、もう二度と、芝居なんて見ることできないのです。
だから、観客にも義務があるのと思うのです。精一杯見る、生きる、死者たちに恥じることなき人生を生きるという義務が。
ご足労いただいたのに大変失礼な物言いとなってしまいましたが、遥か遠く雲の上にいる多くの犠牲者たちに見られていると言う気持ちをどこかに持ちながら、僕らが創作家として観客として、人間として、生きている人間として、いまという時間に胸を張れるかどうかが試されているのだと思うのです。
そんなことを考えながら、今日の舞台と、そして最後の座談会を見ていただけたらと思います。

「日本の問題」企画者・総合プロデューサー 松枝佳紀

---
公演詳細

「日本の問題 Ver.311」

日程:2012年3月6日から3月11日

場所:渋谷 ギャラリー・ルデコ4

開演時間とアフタートーク・ゲスト

3/06(火)19:00 JACROW主宰・中村暢明さん & ミナモザ主宰・瀬戸山美咲さん
3/07(水)14:46 評論家・木俣 冬さん
3/07(水)19:00 東京家族ラボ主宰・池内ひろ美さん
3/08(木)14:46 評論家・カトリヒデトシさん
3/08(木)19:00 ニッポン放送・節丸雅矛さん & Mrs.fictions主宰・今村圭佑さん
3/09(金)14:46 水族館文庫代表・渡辺パコさん & 石巻出身の劇作家 ウィルチンソン主宰・矢口龍汰さん
3/09(金)19:00 DULL-COLORED POP主宰・谷 賢一さん
3/10(土)14:46 ミームの心臓主宰・酒井一途さん
3/10(土)19:00 経済とH主宰・佐藤治彦さん
3/11(日)14:46 写真家・所幸則さん & 小学館クリエイティブ・渡邉哲也さん

■演目
演目1「まだ、わかんないの。」
作:広田淳一(ひょっとこ乱舞)、演出:鳥越永士朗(劇団けったマシーン)
出演:角北龍、長瀬みなみ
(※)本作は、2011年7月のフェニックス・プロジェクトにおいてひょっとこ乱舞の新作朗読劇として広田淳一氏によって作演出され、好評を博した演目。今回、広田氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目2「指」
作:瀬戸山美咲(ミナモザ)
演出:鳥越永士郎(劇団けったマシーン)
出演:小澤絵里香、高山五月(真空劇団)
(※)本作は、2011年11月の「日本の問題」B班においてミナモザの瀬戸山美咲氏によって作演出され、好評を博した短編演劇。今回、瀬戸山氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目3「3.111446…」
作・演出・出演:岩渕幸弘(思出横丁)

演目4「アカシック・レコード」
作・演出:菊地史恩(四次元ボックス)
出演:朝戸佑飛、大鶴美仁音、長木健、原田宏治郎、毛利悟巳、佐藤修作(四次元ボックス)

演目5「止まり木の城」
作・演出:長田莉奈(荒川チョモランマ)
出演:あに子、モンゴル、三輪友実、吉武奈朋美、たこ魔女さん (以上、荒川チョモランマ) / 有吉宣人(ミームの心臓)
※上記キャストの内、毎ステージ3名が出演します。 詳細は荒川チョモランマHPをご覧ください。 http://arakawachomolungma.web.fc2.com

よろしければCoRichに応援のメッセージをよろしくお願いします。
PChttp://stage.corich.jp/stage_hope_detail.php?stage_main_id=26545
携帯http://www.corich.jp/m/s/stage_detail.php?stage_id=34398

その他詳細はHPにて
http://nipponnomondai.net/ver311/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/03

石巻出身、矢口龍汰さんのブログ

「日本の問題Ver.311」なる企画の本番が目前である。

前記事で書いたように、この企画は、作り手が悩みに悩んで作るそのことに一番の意味があるのかもしれないと思っている。→前記事「修羅場「日本の問題Ver.311」」

本公演、毎公演後に、ゲストを招いての座談会がある。

ここんところ、「ProjectBUNGAKU太宰治」からずうっとアフタートークがあるのが前提の公演を打ち続けてきているが、その意味するところのひとつは、作り手にプレッシャーを与えることである。

だから、企画のアフタートークががぜん面白くなる。

厳しい演劇「外」の目線から、参加団体の作品が横並びで批評されるのである。

よくアフタートークで、芝居を褒めてくれそうな人を招くというのがあるが、僕はできるだけ怖い人を招きたい。

下手な物を見せられないぞと。

そういうアフタートークを設定することで、作品のクオリティーはより上がる。

アフタートーク自体も緊張し盛り上がるし、意義のあるディスカッションができる。

3/9 14時46分開演の回に、石巻出身の劇作家で、ウィルチンソン主宰の矢口龍汰さんにいらしていただく。

矢口さんは、被災地の視線を持っている。

この人に、僕らの芝居を見せることの怖さと言ったらないだろう。

でも、その怖さに打ち勝つ作品、苦悩の末の作品を皆が披露するだろうことを信じている。

矢口さんが「『日本の問題 ver.311』のアフタートークに参加するに当たって考えたこと思ったこと。」という真摯なブログ記事を書いて下さった。

僕の書いた前記事と併せてお読みいただければと思います。また矢口さんのブログは他の記事も読むべき内容がいっぱいです。ぜひ読んでみてください。

------
「日本の問題 Ver.311」

日程:2012年3月6日から3月11日

場所:渋谷 ギャラリー・ルデコ4

開演時間とアフタートーク・ゲスト

3/06(火)19:00 CoRich所属演劇コラムニスト・手塚宏二さん & JACROW主宰・中村暢明さん
3/07(水)14:46 評論家・木俣 冬さん
3/07(水)19:00 東京家族ラボ主宰・池内ひろ美さん
3/08(木)14:46 評論家・カトリヒデトシさん
3/08(木)19:00 ニッポン放送・節丸雅矛さん & Mrs.fictions主宰・今村圭佑さん
3/09(金)14:46 水族館文庫代表・渡辺パコさん & 石巻出身の劇作家 ウィルチンソン主宰・矢口龍汰さん
3/09(金)19:00 DULL-COLORED POP主宰・谷 賢一さん
3/10(土)14:46 ミームの心臓主宰・酒井一途さん
3/10(土)19:00 経済とH主宰・佐藤治彦さん
3/11(日)14:46 写真家・所幸則さん & 小学館クリエイティブ・渡邉哲也さん

■演目
演目1「まだ、わかんないの。」
作:広田淳一(ひょっとこ乱舞)、演出:鳥越永士朗(劇団けったマシーン)
出演:角北龍、長瀬みなみ
(※)本作は、2011年7月のフェニックス・プロジェクトにおいてひょっとこ乱舞の新作朗読劇として広田淳一氏によって作演出され、好評を博した演目。今回、広田氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目2「指」
作:瀬戸山美咲(ミナモザ)
演出:鳥越永士郎(劇団けったマシーン)
出演:小澤絵里香、高山五月(真空劇団)
(※)本作は、2011年11月の「日本の問題」B班においてミナモザの瀬戸山美咲氏によって作演出され、好評を博した短編演劇。今回、瀬戸山氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目3「3.111446…」
作・演出・出演:岩渕幸弘(思出横丁)

演目4「アカシック・レコード」
作・演出:菊地史恩(四次元ボックス)
出演:朝戸佑飛、大鶴美仁音、長木健、原田宏治郎、毛利悟巳、佐藤修作(四次元ボックス)

演目5「止まり木の城」
作・演出:長田莉奈(荒川チョモランマ)
出演:あに子、モンゴル、三輪友実、吉武奈朋美、たこ魔女さん (以上、荒川チョモランマ) / 有吉宣人(ミームの心臓)
※上記キャストの内、毎ステージ3名が出演します。 詳細は荒川チョモランマHPをご覧ください。 http://arakawachomolungma.web.fc2.com

よろしければCoRichに応援のメッセージをよろしくお願いします。
PChttp://stage.corich.jp/stage_hope_detail.php?stage_main_id=26545
携帯http://www.corich.jp/m/s/stage_detail.php?stage_id=34398

その他詳細はHPにて
http://nipponnomondai.net/ver311/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/02/28

修羅場「日本の問題Ver.311」

大変、忙しくしています。仕事の優先順位がときどき判らなくなるくらいに。

で、自然、ブログは後回しになってしまうのですが、ちょっと書いておかねばと思ったことがあるので書きます。

おとといの日曜日、「日本の問題Ver.311」の会合がありました。

「日本の問題Ver.311」は、2012年3月6日から11日まで学生劇団4団体を集めてやるオムニバス公演で、全劇団が311すなわち、東日本大震災をテーマに扱った芝居を作り披露し、その公演の収益を全額、被災地の復興支援に寄付すると言う企画公演です。

僕はこの公演のプロデューサーをやっているのですが、日曜日には、本番9日前ということで、各劇団の作品見せがあったのです。

「作品見せ」とは、各劇団の演目を見せあい、批評し合って、改善できるところは改善して、残り9日間の稽古をより有意義なものにするためにやるものです。(それだけではないのですが、ザクっとそういうことにしておきます)

実際は、青山学院大学の鳥越くんが率いる劇団けったマシーンについては、スケジュールの問題があって、作品は披露されなかったので、残り3劇団によって、作品見せは行われました。

直前に台本が上がった劇団もあり、各演目については、これからの改善点が多かったのですが、しかし、プロデューサーの僕的には、9日後には胸を張って自慢できる作品が並ぶことが予感できる「作品見せ」となり一安心というところでした。

で、「作品見せ」が終わった後に、各演目についてのダメ出し会がありました。

プロデューサーの僕の意見を皮切りに、全参加者が意見を言ってまわります。

現場は実にフラットで、プロデューサーである僕の意見が一番と言うことはなく、プロデューサーの意見に反対の意見も多数自由闊達に述べられ、実にクリエイティブな会となったと言えます。

が、この「作品見せの後のダメ出し会」無難に平穏無事に過ぎたわけではありません。

最初に桜美林大学の岩渕くんが率いる思出横丁の芝居・・・と言っても岩渕くんの独り芝居なのですが・・・への感想や改善提案などがあり、それが終わって、次の団体、日本大学芸術学部の菊地史恩くんが率いる四次元ボックスの芝居への感想や改善提案がなされている途中、思出横丁の岩渕くんの発言の番が来た時、問題が勃発しました。

「四次元ボックスの作品に言及する前に、この企画自体に対する意見を言わせてください」

そのようにたぶん岩渕くんは口火を切りました。

その後に続く彼の長い真摯な発言については記録をしていないため、全文を記すことはできません。

ですが、その趣旨はこうです(間違っていたら、現場にいたみんな指摘してください)。

「もともと、僕は(つまり岩渕くんは)震災を取り扱ったこの企画の実行には懐疑的で参加したくないと思っていた。理由は、被災地のことを何も知らない僕らが演劇をしてもたかが知れているし、たとえそれが全額寄付だとしてもたかが知れているし、それならば、芝居を作ることなど止めて、被災地に行き、ボランティアで汗を流す方が意義のあることだろうと思ったからである。しかし、参加することになり、最初に抱いていた危惧はありながら、作品を作ることになった。作品を作る上は、前回、つまり2011年12月にやった「日本の問題 学生版」での反省を生かしつつ作品を作ろうと思った。前回の反省とは、まず見に来てくれた坂手洋二さんに言われたことにある。坂手さんには「キミたちは新聞を読んでいればわかることすら書いていない。君たちの描いているのは日本の問題などではなく、自分の問題にすぎない」と批判された。それを図星だと思った。だから、今回はそれに応えるべく、新聞を読んだ。そして書籍などで調べられる範囲であの震災の事、震災で被害にあわれた人たちの事を勉強をした。調べれば調べるほど、ますます軽々しく、このことを扱うことはできないと感じた。結果、もし、僕が作品を提出できるとしたら、「お芝居」ではいけないと思った。また役者の言葉ではなく僕の言葉で作品は語られないといけないと思った。僕の言葉で、被災地の事、あの震災の事を伝えようとするしかないと思うに至った。しかし、今日の作品見せとなって、やはりこれで良かったのか?と疑問が蘇った。企画自体に対する疑問をやはりぬぐえない。僕たちがなにをやろうが結局「で?」じゃないのだろうか?「震災を演劇にしました。」「で?」「被災地に収益を全額寄付しました。」「で?」・・・「で?どうした?演劇なんかせずにやはり被災地にボランティアに行けよ」という言葉に抗えないのじゃないだろうか。あの震災では沢山の人たちが死んでいる。なのに、僕らは演劇を作って、あの作品が面白かったとか、こうすれば面白くなるんじゃないでしょうかとか。面白いじゃねえだろ。面白いじゃねえんだよ。沢山の人が死んでるのに」

というような内容であったと思う。

被災地の事を思い、自分たちの無力さを思い岩渕くんは泣き、僕ももらい泣きをした。他の主宰たちもそして役者たちも想いを同じくしていた。やるからにはやると決めたものの、本当にこれで良いのか、この作品で良いのか、ここに居て良いのか、その迷いの中に居る。仲間であると思った人が蔭であの企画は無いよねとせせら笑っているのを知っている。

僕自身も正直この企画を始めるときには大変な迷いがあった。自分の迷いを断ち切るために陸前高田の災害ボランティアにも行った。しかし、その迷いは深くなっていた。実際、現地に行けば、復興の進展は多少の進展にすぎなく、根気強い復興努力がおそらく十数年単位で必要で、ますますボランティアは必要となっているのに、しかしのど元過ぎたボランティアは減少しているという事実もある。そのようなことを知ったうえで、なのに、僕らはボランティアに割ける時間を演劇に割くのである。観客のみなさんは観劇に時間を割くのである。(あるいは読書に、旅行に、通勤に、睡眠に、食事に、デートに時間を割くのである。)それは許されることなのだろうか。許されないことなのだろうか。

この疑問に対する答えは今も出ていない。そのことを僕は岩渕くんにそしてみんなに正直に言った。ギリギリまで悩むしかないと言うことも。

ただ、ぼんやりとだが、演劇をしていいんだという答えを見つけなければいけないとも思っている。僕らは僕らとして生きていい。ボランティアにも行かなくても良い。いや、やっぱり行けたら行けと思うけれども、全員行けと強制しなくても良いということが答えにならないといけないとも思っている。いや、わからない。わからないが、こうやって悩んで作品を作ることは、今回の企画を実行せねば避けることができたかもしれないが(本当は避けられないはずなのだが)、もう避けられなくなった。そのことをもって、今回の企画の意味なのかもしれないとも思っている。演劇をしても良いんだという答えを見つけなければと言ったが、答えが、演劇を捨てよ、被災地に行けだとしたら、それはそれでいいとも思っている。

実際に石巻まで足を運んだ荒川チョモランマ主宰の長田莉奈さんは自分の作品を見てより多くの人が「ボランティアに行こう」と思ってくもらえるような作品を作るという。それは大変難しいことだ。僕自身はあの現地のガレキの山の多さを見て、そしてそのガレキが実はガレキではなく沢山の思い出の品で作られており、その多くがブルドーザーでザーッとやることで済むものではなく地道な手作業で分別せねばならぬものであることを知り、気の遠くなる作業の多さに、ボランティアの必要性を生身で知ったけど、演劇であれを伝えることができるのか?演劇ではなく、数値のほうが人を動かしやしないか?たとえば、実働ボランティア***名でガレキの片付けに***十年かかる。だからボランティアを増やそうと言うことのほうが有効ではないか?演劇に何ができるのか?たとえばあの震災の悲惨さを表現しようとする。YouTubeの映像のほうがよっぽど心を動かさないか。演劇に何ができるのか?僕は長田さんの試みの成功に期待している。演劇には演劇にしかできないことがあるのだ。そう思わせて欲しい。

僕らは演劇の有効性を見いだしたい。

だがそれが可能なのかどうか、わからない。

そのような混乱のうちに、おとといの「作品見せ」は終わった。

ダメ出し会が四次元ボックスの途中で終わったので、みんなで居酒屋に移動して続きをやった。先ほどの議論を経たためか、役者たちも、真剣に自分たちの存在意義参加意義を考え始めている。

岩渕クンがぽつりと言った。

「この企画に参加して良かったと思います。参加したから沢山の事を勉強し沢山の事を知りました。参加しなければ、僕は馬鹿のままでした」

まだ公演は始まっていないけど、企画者として、この公演をやってよかったと思える言葉でした。

ちょっと救われた。

だけど、それだけで終わっていても仕方ない。

本番まであと一週間。悩み続けようと思います。

彼ら(ほとんどが20歳前後です)の答えをぜひ見に来てください。

彼らの芝居をぜひ見に来てやってください。

彼らが何をどう苦しみ、なにを芝居にし、何を芝居にしなかったのか。

見に来ていただければと思います。

「日本の問題 Ver.311」

日程:2012年3月6日から3月11日

場所:渋谷 ギャラリー・ルデコ4

開演時間とアフタートーク・ゲスト

3/06(火)19:00 CoRich所属演劇コラムニスト・手塚宏二さん & JACROW主宰・中村暢明さん
3/07(水)14:46 評論家・木俣 冬さん
3/07(水)19:00 東京家族ラボ主宰・池内ひろ美さん
3/08(木)14:46 評論家・カトリヒデトシさん
3/08(木)19:00 ニッポン放送・節丸雅矛さん & Mrs.fictions主宰・今村圭佑さん
3/09(金)14:46 水族館文庫代表・渡辺パコさん & 石巻出身の劇作家 ウィルチンソン主宰・矢口龍汰さん
3/09(金)19:00 DULL-COLORED POP主宰・谷 賢一さん
3/10(土)14:46 ミームの心臓主宰・酒井一途さん
3/10(土)19:00 経済とH主宰・佐藤治彦さん
3/11(日)14:46 写真家・所幸則さん & 小学館クリエイティブ・渡邉哲也さん

■演目
演目1「まだ、わかんないの。」
作:広田淳一(ひょっとこ乱舞)、演出:鳥越永士朗(劇団けったマシーン)
出演:角北龍、長瀬みなみ
(※)本作は、2011年7月のフェニックス・プロジェクトにおいてひょっとこ乱舞の新作朗読劇として広田淳一氏によって作演出され、好評を博した演目。今回、広田氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目2「指」
作:瀬戸山美咲(ミナモザ)
演出:鳥越永士郎(劇団けったマシーン)
出演:小澤絵里香、高山五月(真空劇団)
(※)本作は、2011年11月の「日本の問題」B班においてミナモザの瀬戸山美咲氏によって作演出され、好評を博した短編演劇。今回、瀬戸山氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目3「3.111446…」
作・演出・出演:岩渕幸弘(思出横丁)

演目4「アカシック・レコード」
作・演出:菊地史恩(四次元ボックス)
出演:朝戸佑飛、大鶴美仁音、長木健、原田宏治郎、毛利悟巳、佐藤修作(四次元ボックス)

演目5「止まり木の城」
作・演出:長田莉奈(荒川チョモランマ)
出演:あに子、モンゴル、三輪友実、吉武奈朋美、たこ魔女さん (以上、荒川チョモランマ) / 有吉宣人(ミームの心臓)
※上記キャストの内、毎ステージ3名が出演します。 詳細は荒川チョモランマHPをご覧ください。 http://arakawachomolungma.web.fc2.com

よろしければCoRichに応援のメッセージをよろしくお願いします。
PChttp://stage.corich.jp/stage_hope_detail.php?stage_main_id=26545
携帯http://www.corich.jp/m/s/stage_detail.php?stage_id=34398

その他詳細はHPにて
http://nipponnomondai.net/ver311/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧