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2012/02/28

修羅場「日本の問題Ver.311」

大変、忙しくしています。仕事の優先順位がときどき判らなくなるくらいに。

で、自然、ブログは後回しになってしまうのですが、ちょっと書いておかねばと思ったことがあるので書きます。

おとといの日曜日、「日本の問題Ver.311」の会合がありました。

「日本の問題Ver.311」は、2012年3月6日から11日まで学生劇団4団体を集めてやるオムニバス公演で、全劇団が311すなわち、東日本大震災をテーマに扱った芝居を作り披露し、その公演の収益を全額、被災地の復興支援に寄付すると言う企画公演です。

僕はこの公演のプロデューサーをやっているのですが、日曜日には、本番9日前ということで、各劇団の作品見せがあったのです。

「作品見せ」とは、各劇団の演目を見せあい、批評し合って、改善できるところは改善して、残り9日間の稽古をより有意義なものにするためにやるものです。(それだけではないのですが、ザクっとそういうことにしておきます)

実際は、青山学院大学の鳥越くんが率いる劇団けったマシーンについては、スケジュールの問題があって、作品は披露されなかったので、残り3劇団によって、作品見せは行われました。

直前に台本が上がった劇団もあり、各演目については、これからの改善点が多かったのですが、しかし、プロデューサーの僕的には、9日後には胸を張って自慢できる作品が並ぶことが予感できる「作品見せ」となり一安心というところでした。

で、「作品見せ」が終わった後に、各演目についてのダメ出し会がありました。

プロデューサーの僕の意見を皮切りに、全参加者が意見を言ってまわります。

現場は実にフラットで、プロデューサーである僕の意見が一番と言うことはなく、プロデューサーの意見に反対の意見も多数自由闊達に述べられ、実にクリエイティブな会となったと言えます。

が、この「作品見せの後のダメ出し会」無難に平穏無事に過ぎたわけではありません。

最初に桜美林大学の岩渕くんが率いる思出横丁の芝居・・・と言っても岩渕くんの独り芝居なのですが・・・への感想や改善提案などがあり、それが終わって、次の団体、日本大学芸術学部の菊地史恩くんが率いる四次元ボックスの芝居への感想や改善提案がなされている途中、思出横丁の岩渕くんの発言の番が来た時、問題が勃発しました。

「四次元ボックスの作品に言及する前に、この企画自体に対する意見を言わせてください」

そのようにたぶん岩渕くんは口火を切りました。

その後に続く彼の長い真摯な発言については記録をしていないため、全文を記すことはできません。

ですが、その趣旨はこうです(間違っていたら、現場にいたみんな指摘してください)。

「もともと、僕は(つまり岩渕くんは)震災を取り扱ったこの企画の実行には懐疑的で参加したくないと思っていた。理由は、被災地のことを何も知らない僕らが演劇をしてもたかが知れているし、たとえそれが全額寄付だとしてもたかが知れているし、それならば、芝居を作ることなど止めて、被災地に行き、ボランティアで汗を流す方が意義のあることだろうと思ったからである。しかし、参加することになり、最初に抱いていた危惧はありながら、作品を作ることになった。作品を作る上は、前回、つまり2011年12月にやった「日本の問題 学生版」での反省を生かしつつ作品を作ろうと思った。前回の反省とは、まず見に来てくれた坂手洋二さんに言われたことにある。坂手さんには「キミたちは新聞を読んでいればわかることすら書いていない。君たちの描いているのは日本の問題などではなく、自分の問題にすぎない」と批判された。それを図星だと思った。だから、今回はそれに応えるべく、新聞を読んだ。そして書籍などで調べられる範囲であの震災の事、震災で被害にあわれた人たちの事を勉強をした。調べれば調べるほど、ますます軽々しく、このことを扱うことはできないと感じた。結果、もし、僕が作品を提出できるとしたら、「お芝居」ではいけないと思った。また役者の言葉ではなく僕の言葉で作品は語られないといけないと思った。僕の言葉で、被災地の事、あの震災の事を伝えようとするしかないと思うに至った。しかし、今日の作品見せとなって、やはりこれで良かったのか?と疑問が蘇った。企画自体に対する疑問をやはりぬぐえない。僕たちがなにをやろうが結局「で?」じゃないのだろうか?「震災を演劇にしました。」「で?」「被災地に収益を全額寄付しました。」「で?」・・・「で?どうした?演劇なんかせずにやはり被災地にボランティアに行けよ」という言葉に抗えないのじゃないだろうか。あの震災では沢山の人たちが死んでいる。なのに、僕らは演劇を作って、あの作品が面白かったとか、こうすれば面白くなるんじゃないでしょうかとか。面白いじゃねえだろ。面白いじゃねえんだよ。沢山の人が死んでるのに」

というような内容であったと思う。

被災地の事を思い、自分たちの無力さを思い岩渕くんは泣き、僕ももらい泣きをした。他の主宰たちもそして役者たちも想いを同じくしていた。やるからにはやると決めたものの、本当にこれで良いのか、この作品で良いのか、ここに居て良いのか、その迷いの中に居る。仲間であると思った人が蔭であの企画は無いよねとせせら笑っているのを知っている。

僕自身も正直この企画を始めるときには大変な迷いがあった。自分の迷いを断ち切るために陸前高田の災害ボランティアにも行った。しかし、その迷いは深くなっていた。実際、現地に行けば、復興の進展は多少の進展にすぎなく、根気強い復興努力がおそらく十数年単位で必要で、ますますボランティアは必要となっているのに、しかしのど元過ぎたボランティアは減少しているという事実もある。そのようなことを知ったうえで、なのに、僕らはボランティアに割ける時間を演劇に割くのである。観客のみなさんは観劇に時間を割くのである。(あるいは読書に、旅行に、通勤に、睡眠に、食事に、デートに時間を割くのである。)それは許されることなのだろうか。許されないことなのだろうか。

この疑問に対する答えは今も出ていない。そのことを僕は岩渕くんにそしてみんなに正直に言った。ギリギリまで悩むしかないと言うことも。

ただ、ぼんやりとだが、演劇をしていいんだという答えを見つけなければいけないとも思っている。僕らは僕らとして生きていい。ボランティアにも行かなくても良い。いや、やっぱり行けたら行けと思うけれども、全員行けと強制しなくても良いということが答えにならないといけないとも思っている。いや、わからない。わからないが、こうやって悩んで作品を作ることは、今回の企画を実行せねば避けることができたかもしれないが(本当は避けられないはずなのだが)、もう避けられなくなった。そのことをもって、今回の企画の意味なのかもしれないとも思っている。演劇をしても良いんだという答えを見つけなければと言ったが、答えが、演劇を捨てよ、被災地に行けだとしたら、それはそれでいいとも思っている。

実際に石巻まで足を運んだ荒川チョモランマ主宰の長田莉奈さんは自分の作品を見てより多くの人が「ボランティアに行こう」と思ってくもらえるような作品を作るという。それは大変難しいことだ。僕自身はあの現地のガレキの山の多さを見て、そしてそのガレキが実はガレキではなく沢山の思い出の品で作られており、その多くがブルドーザーでザーッとやることで済むものではなく地道な手作業で分別せねばならぬものであることを知り、気の遠くなる作業の多さに、ボランティアの必要性を生身で知ったけど、演劇であれを伝えることができるのか?演劇ではなく、数値のほうが人を動かしやしないか?たとえば、実働ボランティア***名でガレキの片付けに***十年かかる。だからボランティアを増やそうと言うことのほうが有効ではないか?演劇に何ができるのか?たとえばあの震災の悲惨さを表現しようとする。YouTubeの映像のほうがよっぽど心を動かさないか。演劇に何ができるのか?僕は長田さんの試みの成功に期待している。演劇には演劇にしかできないことがあるのだ。そう思わせて欲しい。

僕らは演劇の有効性を見いだしたい。

だがそれが可能なのかどうか、わからない。

そのような混乱のうちに、おとといの「作品見せ」は終わった。

ダメ出し会が四次元ボックスの途中で終わったので、みんなで居酒屋に移動して続きをやった。先ほどの議論を経たためか、役者たちも、真剣に自分たちの存在意義参加意義を考え始めている。

岩渕クンがぽつりと言った。

「この企画に参加して良かったと思います。参加したから沢山の事を勉強し沢山の事を知りました。参加しなければ、僕は馬鹿のままでした」

まだ公演は始まっていないけど、企画者として、この公演をやってよかったと思える言葉でした。

ちょっと救われた。

だけど、それだけで終わっていても仕方ない。

本番まであと一週間。悩み続けようと思います。

彼ら(ほとんどが20歳前後です)の答えをぜひ見に来てください。

彼らの芝居をぜひ見に来てやってください。

彼らが何をどう苦しみ、なにを芝居にし、何を芝居にしなかったのか。

見に来ていただければと思います。

「日本の問題 Ver.311」

日程:2012年3月6日から3月11日

場所:渋谷 ギャラリー・ルデコ4

開演時間とアフタートーク・ゲスト

3/06(火)19:00 CoRich所属演劇コラムニスト・手塚宏二さん & JACROW主宰・中村暢明さん
3/07(水)14:46 評論家・木俣 冬さん
3/07(水)19:00 東京家族ラボ主宰・池内ひろ美さん
3/08(木)14:46 評論家・カトリヒデトシさん
3/08(木)19:00 ニッポン放送・節丸雅矛さん & Mrs.fictions主宰・今村圭佑さん
3/09(金)14:46 水族館文庫代表・渡辺パコさん & 石巻出身の劇作家 ウィルチンソン主宰・矢口龍汰さん
3/09(金)19:00 DULL-COLORED POP主宰・谷 賢一さん
3/10(土)14:46 ミームの心臓主宰・酒井一途さん
3/10(土)19:00 経済とH主宰・佐藤治彦さん
3/11(日)14:46 写真家・所幸則さん & 小学館クリエイティブ・渡邉哲也さん

■演目
演目1「まだ、わかんないの。」
作:広田淳一(ひょっとこ乱舞)、演出:鳥越永士朗(劇団けったマシーン)
出演:角北龍、長瀬みなみ
(※)本作は、2011年7月のフェニックス・プロジェクトにおいてひょっとこ乱舞の新作朗読劇として広田淳一氏によって作演出され、好評を博した演目。今回、広田氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目2「指」
作:瀬戸山美咲(ミナモザ)
演出:鳥越永士郎(劇団けったマシーン)
出演:小澤絵里香、高山五月(真空劇団)
(※)本作は、2011年11月の「日本の問題」B班においてミナモザの瀬戸山美咲氏によって作演出され、好評を博した短編演劇。今回、瀬戸山氏のご厚意により、上演させていただく運びとなった。

演目3「3.111446…」
作・演出・出演:岩渕幸弘(思出横丁)

演目4「アカシック・レコード」
作・演出:菊地史恩(四次元ボックス)
出演:朝戸佑飛、大鶴美仁音、長木健、原田宏治郎、毛利悟巳、佐藤修作(四次元ボックス)

演目5「止まり木の城」
作・演出:長田莉奈(荒川チョモランマ)
出演:あに子、モンゴル、三輪友実、吉武奈朋美、たこ魔女さん (以上、荒川チョモランマ) / 有吉宣人(ミームの心臓)
※上記キャストの内、毎ステージ3名が出演します。 詳細は荒川チョモランマHPをご覧ください。 http://arakawachomolungma.web.fc2.com

よろしければCoRichに応援のメッセージをよろしくお願いします。
PChttp://stage.corich.jp/stage_hope_detail.php?stage_main_id=26545
携帯http://www.corich.jp/m/s/stage_detail.php?stage_id=34398

その他詳細はHPにて
http://nipponnomondai.net/ver311/

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2012/02/11

【収益全額寄付公演】日本の問題Ver.311

東日本大震災からちょうど一年となる2012年3月。
ふたたび「日本の問題」を開催します。

 青山学院大学の 「劇団けったマシーン」

 桜美林大学の「思出横丁」

 日本大学芸術学部の「四次元ボックス」

 早稲田大学の 「荒川チョモランマ」

昨年も参加してくれた学生劇団4劇団が、僕ら日本人にとって「東日本大震災」とはなんなのか、引き起こされた沢山の悲しみや苦しみと、どのように向き合っていけばいいのか、僕らの信じる「演劇」を使って考えます。

「東日本大震災」は1万6千人の命を奪い、いまだに多くの人々を悲しませ、苦しませている未曽有の大惨事です。軽々しく「東日本大震災をテーマに演劇やります」などという類の物ではありません。

しかしながら、こんなにも僕らの心に引っかかっていることを、演劇の力を信じる者が、演劇を通して考えないわけにはいきません。
そんな悲劇が無かったかのように通常の公演を打つことなどできません。
たとえ、沢山の批判をいただくことになろうとも、あの震災が僕らに何であるのか、僕らにとって一番切実な問題に答えないで前に進むわけにいきません。
そう考えて、あえて、この企画を遂行させていただくことにしました。
そしてやるからには、意味のある公演に必ずいたします。

今回の公演の収益は、被災地復興支援のために全額寄付させていただきます。
演劇の利益など微々たるものですが、現在僕らができることをしようと思っています。

ぜひとも、3月6日から11日、渋谷ギャラリー・ルデコ4Fに足をお運びください。
一緒にあの震災と被災者に思いをはせ、少しでも早く、被災地の復興と、傷ついた魂たちの癒える日がくるようにと一緒に祈ることができれば嬉しく思います。

(「日本の問題」プロデューサー 松枝佳紀)

■公演詳細

公ホームページ:http://nipponnomondai.net/ver311/

コリッチ:http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=26545

日程:2012年3月6日(火)~11日(日)

場所:渋谷 ギャラリー ル・デコ 4F
   渋谷駅新南口から徒歩3分、東口から徒歩5分
   (渋谷区渋谷3-16-3 ルデコビル 4F)

時間:
   3/06(火) 19:00
   3/07(水) 14:46  19:00
   3/08(木) 14:46  19:00
   3/09(金) 14:46  19:00
   3/10(土) 14:46  19:00
   3/11(日) 14:46
   ※東日本大震災は2011年3月11日14:46に起こりました。
    本公演ではそのことに思いをはせるためマチネ公演をすべて
    この時刻に開始させていただきます。前節等ございますので
    ギリギリではなくお早めにご来場ください。
    前節は14:40からはじめさせていただきます。

料金:一般 前売2,000円、当日2,300円
    学生 前売1,000円、当日1,300円
   ※なお、本公演の収益金は、全額『東日本大震災義援金』とし
    日本赤十字社 へ寄付させていただきます。
   ※追加の寄付も受け付けております。

チケット取扱:コリッチ舞台芸術

問合せ:MAIL:info@nipponnomondai.net
    TEL:080-3519-0131 制作 中山(11:00~19:00)

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