谷賢一演出「Caesiumberry Jam」
今日明日と公演を残している。
これから書くことはネタバレ過ぎるので見てない人は、この記事をこれ以上読まずに、とりあえず、観に行って欲しい。
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さて、
盟友谷賢一氏の劇団DULL-COLORED POPの再始動記念公演である。
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=29092
再始動記念公演だから、気持ちを新たに新作をというのが普通人なら考えそうなことだが
谷くんは、再演を選んだ。
2007年の作品の再演だ。
もちろん、福島原発の事故があってという現状を鑑みての判断だろう。
しかし、作品で描かれる「人間幸福の脆弱性とそれでもの希望」は、福島の原発事故とは切り離されてそこにあった。
当然、福島原発事故に遭遇してしまった現代日本の我々としては、この作品で描かれるチェルノブイリの事故に対して、作品内における書かれようとはまったく関係なく親近感というか臨場感を覚えずにはいられない。
だが、僕がハッとさせられたのは、堀奈津美さん演じるリューダを取り囲む物語と、その物語を背負うにふさわしい堀さんの青白く孤独に屹立した佇まいだ。
誰もが享受すべきささやかな幸せであったはずのモノが、1つの事故をきっかけに召し上げられる。
享受すべき幸せを召し上げられたリューダの切なる思いは、空間をゆがませるほどの磁力を持った…本来享受するはずであった幸福の到来を待つ思い…狂気に変わる。
その空間をゆがませるほどの狂気は不幸であるはずの現実を侵食し、ついには奇跡的な反転をもたらし…ハッピーエンドとなれば、「班女」に代表されるような能にいうところの狂女物の変奏となったところだが、この話では、そうはならない。
リューダの思念をもってしても、現実は反転しえない。
いや反転しえたのかもしれないが、それを許さない客観性…ゴゴの視点、あるいは作家自身の、あるいは観客の視線が、「本当はあんたは不幸なんだよ」とリューダの夢を覚まそうとおせっかいをやく。
最後は、そのお節介を拒否したリューダの世界が観客とゴゴを拒絶して幕は下りる。
リューダの思いに接続しかかった観客は拍手もない世界に押し出されて、客席=現実という本当の絶望の中に帰還する。
「Caesiumberry Jam」は原発事故の悲惨さを描いた話ではない…こともないのだろうが、僕はこの作品から、絶望すべき世界(原発事故があろうがなかろうが絶望的な現代)を前にしてリューダのように思念によって(あるいは演劇によって)これを反転させようとする谷賢一自身の企みを読みとり、しかしそれでもその企みは敗れるだろうという諦めにも似た凍える現実認識を読みとった。
そして、これは原発問題やら何やらが起こるよりも前からの僕らの現状認識に他ならない。
なにをやろうが僕らは敗北するしかない。
再出発にあたって、なによりもまず深い現代の絶望を描いた谷賢一が今後どのように希望を描いて行くのか、とても興味がある。(谷賢一が希望を失っていないのは結婚したことからも明らかである。いや、あるいは希望を失わないためにこそ結婚したのかもしれない)
ますます目の離せない人物である。
それはそうと、堀奈津美さんが体現する静かで動くことのない狂気、「待つ」ことの狂気は刮目すべきであるが、それは何よりも彼女が本当に、自劇団の再開を「待ち」望んでいたこととも無縁ではないように思う。放射能の中で思念の子供(別の男の子供)として生を受けた新生DULL-COLORED POPの今後が非常に楽しみである。
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