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2011/06/12

谷賢一演出「モリー・スウィーニー」@シアタートラム

盟友谷賢一氏がシアタートラムにて南果歩さん、小林顕作さん, 相島一之さんという商業ベースで活躍する役者陣と芝居を作ると言うので早くから注目していたし、当然、初日に観に行かせてもらった。

さて、しかし、トラムという場所や役者などもあるが、それよりもなによりも僕が本公演に一番興味を持ったのは「モリー・スウィーニー」という演目の「谷賢一っぽさ」についてだった。

(谷賢一ブログ「playnote」より「モリー・スウィーニー」あらすじ)

──光と闇の区別を、人は、誤ることがある
──モリーは目が見えない。ずっと光なき世界を生きてきた。
その夫・フランクは、モリーに光を見せたかった。
かつて天才と呼ばれた眼科医・ライスは、彼女の手術を成功させて、人生の光を取り戻したかった。
3人は困難な手術に挑むことを決める。
“失敗したところで、何も失うものはない”、と。
手術は成功し、モリーの目に光が戻った。
初めてモリーは世界を目で見る。
40年間、見えない世界に生きてきたモリーの目には、一体何が映ったのか?

このあらすじを見たときに、僕がすぐに連想したのは、谷くんがちょうど3年前の2008年の6月に作・演出した舞台DULL-COLORED POP第6回公演「小部屋の中のマリー」の物語との類似性だった。

「小部屋の中のマリー」という芝居の物語を大雑把に言うと、「父親によって色のない小部屋に閉じ込められて育ったために白黒の世界しか知らなかったマリーという女の子が、父親から救出されて、部屋の外に出て色のある世界に触れることによって引き起こることごと」というものであったと記憶する。

これは、谷くん本人が明らかにしているし、またタイトルからも明らかなように、「マリーの部屋」という哲学的思考実験から着想を得た話しだ。

この「マリーの部屋」という元話で重要なのは、白黒の部屋から色彩のある場所に移った時にマリーは何かを得るのだろうか?という話であった。もしマリーがsomething newを得るならば、そこにこそ「クオリア」が存在する。というわけである。

これを谷賢一はひっくり返した。

何かを得るのか?という質問自体がおかしい。むしろ、「得る」どころではなく何かを「失う」ことの可能性の方が大きいのだ。というわけである。

さてさて、あんまり突っ込むと「モリー・スウィーニー」のネタバレにもなってくる。

が、見た人なら分かるが、物語の構造はマリーもモリーも僕的には全く同じだ。

だから、見ながら僕は戦慄した。

谷賢一は一貫している、と。

一貫していることは天才にだけ許された永遠の遊び場であり、また天才だからこそ抜け出すことのできない流刑地である。

「見る」「触れる」「世界に出会う」ということに関する徹底した生理学的精神医学的演劇的な興味。

人間の存在に関するこれまた徹底した絶望と、しかしそれでも絶望の果てに残るかすかな光。

すでに3年前の舞台にあったモノがそこにある。

そして、それが3年間の数々の演劇的なあるいは人生的な修羅場で鍛えられた谷賢一氏の演劇的な力によって鮮やかに塗り替えられ、確実に何歩も前に進み、まるで別物のような姿をみせながら、しかし変わらずにそこにあった。

途中講義のようなシーンがあるが、ああ言ったヤンチャも健在である。

ヤンチャを可能にする小林顕作という役者の存在も大きい。

激することなくしかし重く観客に言葉を届けることのできる相島一之。

穏やかな絶望に暮らす可憐の均衡と危うさを見事に体現した南果歩。

役者の素晴らしさが光る。

「この作品は僕の作品の集大成です」

客呼びのために演出家はよく集大成を作るが、この作品は本当に過不足なく谷賢一の作品の集大成になっている。

空間のそこかしこに、谷賢一の演出の定番を見てとることができる。

的確にキャスティングをし役者を感化する演出能力の集大成がそこにある。

「小部屋の中のマリー」ではまだ実感として判らなかったことが沢山腑に落ちた。

クオリアは正直判らなかったが、エングラムはバッチリ伝わったw。

これまで谷くんの芝居を少しでも見たことのある人ならば、何を押しても行くべきだし

見たことが無いならば、これをきっかけに谷くんの芝居を見るべきだし

とにもかくにも、観に行くべきだろう。

最後に本当の光に会うことができる。


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企画公演「日本の問題」は、
小劇場劇団8団体、学生劇団6団体、計14団体による社会派演劇フェスティバルです。

それぞれの劇団が、それぞれがこれぞ「日本の問題」と思うことを14の視点で演劇化します。

小劇場版は11月27日から中野ザ・ポケットでやります。

学生版は12月19日から渋谷ル・デコでやります。

ぜひぜひご期待ください。

ちなみに、小劇場版では8劇団合同オーディションを行います。

以下のURLをご覧いただき、こぞってご応募ください。

http://nipponnomondai.net/au.html

各劇団の演目が紹介されています。

オーディションに関係ない方も、各劇団主宰の思いは非常に面白いのでぜひ読んでみてください。


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