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2011/01/02

謹賀新年2011

あけましておめでとうございます。

松枝佳紀です。

2010年中に書かねばならなかったブログ記事なども沢山あるのですが、今はまず2010年総括および2011年の抱負などを書いておこうと思います。

2010年は大転換の年でした。

●演劇と劇団について

新国立劇場公演を終えた後から、劇団を中心としたやり方に苛立ちを持っていました。

その苛立ちがピークに達したのは2009年11月の番外公演においてです。「僕のやりたいこと」と「劇団のやれること」に、どんどん違いができてしまっていることに気付いたのです。

たとえば、2008年の8月の新国立劇場でやった「ルドンの黙示」を、僕は、僕の作品の最高峰と思っているのですが、あれを実現するためには、あの規模の予算、美術、スタッフ、劇場規模が必要で、それを実行するには劇団というのはなんとも心もとないものにすぎなく、実際、外部の魅力もあり集客力もある役者の参加に頼らざるをえませんでした。

なので「ルドンの黙示」以降の公演では、劇団員だけで、しかもアイドル劇団化しない方向で、「ルドンの黙示」的な大きなテーマを持った芝居をやることを目標として、がんばって活動してきました。しかし結論から言うと、これがなかなか難しかったというのが正直なところです。

劇団の主宰としては、所属する役者たちの集客力を伸ばすための努力もしてきたつもりです。

やり方が正しいかどうか分からないけど、僕としては映像に片足を突っ込んでいるので、そういう映像分野での露出を増やすことが、集客力のある役者を育てるためには急務と考えました。私費でマネージャーを雇い、劇団員の映画やテレビに対する営業を数か月しました。最初は難しくても、じきに効果は出てくるはず。そう思ったのですが、実際は金が出て行くばかりで、なかなか仕事の獲得に結び付かなかった。

結果、僕の資金が底をつき、マネージャーを雇うのは辞めました。

いわゆる役者を育てる方向としては、メソッド的なことを教えて演技力を増強する…と言うような方向もあるのでしょうが、演技力増強と、演者としての魅力を増すことは違うことだと思っています。いかに演技力がアップしたとしても、売れる役者、人を呼べる役者になれるわけじゃありません。

満島ひかりちゃんをみても分かりますが、役者の魅力とは、演技とかそういう技巧や技術の問題ではなく、その人の人間の奥底から湧き出でてくる三千年の汚水みたいなもので、それはいわゆる演技レッスン的な、明るく健全なことで鍛えられるものではないと考えています。

「4人の現役映画監督による実践的ワークショップ」を運営しているとわかるのですが、役者は自分の演技がどうかを知りたがるが、監督は一様にして役者には演技力ではなく魅力をもとめます。魅力ある役者と組むことは、芸術と経済を両立させる可能性があるからです。しかし、常に困るのは演技力を育てるやり方は多々あり指導することが可能なのですが、魅力を育てるやり方については定まった方法論が無いと言うことです。「よりよく生きよノタウチマワレ血反吐を吐け」と言うことしかできません。

そういう役者指導、劇団員管理、劇団運営に長いこと腐心し、そして限界と苛立ちを感じていました。 

脚本家・演出家としてはしたいことがあり、そして、それは満島ひかりクラスの役者と組むことですぐにも実現可能なことであり、しかし役者の成長を優先にする劇団の主宰としては、自分勝手なことをすることは許されず、自分のしたいこととは別のことをしなければならない。役者の成長を第一義においた公演を打たなければならない。その矛盾が僕をだいぶ苦しめました。

結果、僕の気持ちは、劇団公演ではなくて、プロジェクト文学を立ち上げる方向に向きました。

広田淳一、吉田小夏、谷賢一という才能と公演を打つことに非常な魅力を感じたのです。

人間、欲望がなければ報酬無き行動は続きません。僕は自分の欲望に素直になり、プロジェクト文学を自分の主に置き、2010年の劇団本公演は打たないことを決定しました。

プロジェクト文学は予想以上の好評を得、無事終了しました。主宰の4名は戦友と呼べる信頼の絆を得ました。4名それぞれに忙しいので、時間を調整するのは難しいですが、2011年、2012年とプロジェクト文学は続けていけたらなと思っています。

プロジェクト文学を実行している時の僕の欲望と快感が何であったかと言うと、それは脚本や演出の欲望や快楽とは別の、自分の仕掛けが人を驚かせ喜ばせることの喜びというか、おそらくそれはプロデューサーとしての欲望や快楽であったのだと思います。

一方で、劇団運営については答えが出たわけではありません。悩んでいました。正直にそのことを劇団員に話しました。僕は自分のしたいことだけをしたい。昨年父が死に、次は僕の番で、だから急がないといけない。僕のしたいことをしたい。しなければいけないことをしたい。そしてそのしたいことをする時に、劇団は、申し訳ないけどオモシになる可能性がある。そんな自分勝手なことを話しました。皆は話をよく聞いてくれて、その場でどうするかは答えは出さずに、皆がそれぞれどうするべきか、各自持って帰り、じっくり考えることになりました。

2010年のクリスマスを過ぎたあたりにどうするかそれぞれの答えが出ました。

劇団アロッタファジャイナは、松枝佳紀、ナカヤマミチコ、青木ナナの三人で続けて行くことになりました。峯尾晶についてはフリーになりました。安川については、すでに劇団を離れ、別の事務所で活躍をしています。

それぞれ立場は変われど、「やりたいことをやりたいようにやる」というクリエイティブの原点に戻りたいと思っています。まだ具体的に何をするかは決まっていませんが、余命がわずかであると想定したときに、回り道をしている暇はありません。やりたいことをやらないといけない。長い目でみていただき、応援していただけると嬉しいです。

●映画、シナリオライターについて

2010年の映画、僕のベスト1は「ノルウェイの森」です。そして次に来るのが「悪人」。僕は、2008年の春から夏にかけて、「悪人」の企画開発に関わり、その映画化の方向性を探り、プロットを書くと言う仕事をしていました。しかし、その年は、新国立劇場でやる「ルドンの黙示」に賭けたいと言う気持ちが強く、貴様何様という感じですが、途中で、降りさせてもらったという経緯があります。その代わり、「ルドンの黙示」には死ぬ気で関わり、僕自身の作演出作品としてベストの物にしあげることができたという気持ちがあります。とは言うモノの、大きな魚を逃したなと言う気持ちもあります。特に、「ルドンの黙示」で主役を張ってくれた満島ひかりが、映画「悪人」にも重要な役で出演しているのを見ると、ずるい、という気持ちになります(笑)。

演劇は好きですが、僕の中には、映画と言う浸透力の大きなメディアを使って作品を発表していきたいと言う気持ちが強くあり、また収入的にも映像は非常に魅力的です。

「悪人」を降りて以降、角川映画で西竹一陸軍大佐の生涯を描いた「硫黄島に死す」の映画化に関わり、これは第三稿まで書いたのですが、角川の政変で企画がぽしゃり消えました(気にいっている脚本なのでどこかで映画化できないものかと考えています)。その後、いまヒットしている「武士の家計簿」にも関わったのですが、脚本まではいかず、脚本協力というところで僕の仕事は終わりました。父の死という僕の個人的体験を元に書いたオリジナル脚本「夏休みなんかいらない」を金子監督と共に書き上げたのですが、これも映画化のめどが現状はまだついていません。他にも企画開発段階でつぶれた魅力的な多くの企画に関わってきました。

そんな中、何か自分の一人の手になる作品を早く世に問いたい。そのことを金子監督に相談したときに、金子監督に言われたのは、劇団活動を縮小し、シナリオライターとして本当にやりたいことに集中しろと言うことでした。そのアドバイスもあり、2010年は劇団活動を控えたと言うのもあります。

現在、金子監督と開発している某作品については、アドバイスをくれた金子監督の指導もあり、うまくいく公算が高いです。もちろん一筋縄ではいかないこの業界のことですからどうなるかわかりませんけれども、いま第一稿を書いておりなかなか面白いものができるのではないかと、僕次第なんですが(^^;、頑張っているところです。

そのほかにも、幸運な出会いがいくつかあり、仕掛かり品が何本かあります。

プロジェクト文学「太宰治」をきっかけに知り合いになった映画「人間失格」の監督でもある荒戸源次郎監督には大変お世話になっています。時代劇の脚本を書かせてもらいました。いわゆる剣豪物なのですが、かなり史実を調査し、そのうえで作り上げた脚本です。最近の時代劇にはないハードボイルドな毒のある内容の映画になりそうです。

また、他に知り合った監督方とたくらんでいる作品がゾロリとあります。

さらに、2010年は、シナリオライターとしても、もうすこしプロっぽくやろうと言うことで、事務所にも所属しました。DIPREXという事務所です。僕の大好きな海外TVドラマ「SUPERNATURAL」のジャパニメーション作品のなかの途中の1話を書かせてもらいました。また、DIPREXのキム社長は営業力も企画力もある人で信頼をしています。僕がなかなか近付けない仕事を持ってきてくれそうで、非常に期待をしています。

そういうことで、2011年は、2010年よりも、かなり忙し楽しい年になりそうです。

●それから…

勉強をしています。沢山の本を読み、沢山の映画や芝居を観、沢山の音楽を聞こうと思っています。インプットした分は必ずアウトプットをしようと思います。できるだけ、読書の感想、観劇の感想などはブログなどで文字にしておこうと思います。「ああ、面白かった」では、経験は血肉になりません。言葉にし、意識にし、体系化し、間違えて、指摘され、非難され、喧嘩して、そして何かを掴まなければ、経験は自分の使える道具にはなりません。

そう言う意味では2010年は沢山の悔いが残っています。読みたかった本を全部読めなかった。観たい映画、見たい芝居を全部観ることができなかった。書きたい作品を全部書くことができなかった。

2011年の目標は、より悔いのない1年に近づけるということです。欲望が大きければ悔いが大きいのも分かってます。分かってますが、それでもできるだけ、欲望をさらに大きくもちながら、やるべきことを、より効率的に、2010年よりも多く、果たしていきたいと思っています。

そんなわけで、2011年も、松枝佳紀、アロッタファジャイナをよろしくお願いしますm(_ _)m


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