« 衆愚 | トップページ | 大人計画「母を逃がす」 »

2010/11/29

青年団リンク「演劇入門」

ちなみに最近ツイッターでツブヤキまくっていて、ブログを書くのが面倒なのだが、ツイッターでのツブヤキをもとに書きなおす形でブログを書いていけたらなと思っている。ツイッターはもうその場の思いつきで書いている。

松枝ツイッター

で、本題。

観てきました本広克行監督が演出する「演劇入門」http://bit.ly/dFbfkm

原作は、累積7万部も売れている平田オリザさんの演劇HOW TO本。

興味の中心はそれで、つまり、物語ではなく、「演劇入門」というHOWTO本が演劇になると言うのが興味津々で観に行きました。

ハイバイの岩井さんが脚本とは知らずに行ったのですが、みごと岩井さん色の色濃い素晴らしい作品となっていました。

僕は、平田オリザさんの「演劇入門」が出版されて、すぐにこれを手に入れた人間です。

というのも「演劇入門」という大胆なタイトルに「これだけが「演劇」です」と勝手に旗をあげられた気がして敵意を覚えたからです。

本にはびっしりと書き込みをしたのですが、それは全部反論。

ただ、反論を考えるために、うんうんと考えたことが、自分なりに演劇とは何かを考える良いきっかけになったし、必死で反論考えたからよく内容を覚えている。

ので、本広演出「演劇入門」を見て、おお、と思うところ多かった。

アフタートークゲストは君塚良一さんだった。踊る大捜査線コンビが演劇を語る。

本当に面白い、君塚さんは。実直な本広さんと対照的。

で、話を聞いていて思ったのは、あらら、意外に僕は映画側の人間だったんだなあと言うこと。

 

最近、就活をしている人たちと話す機会が複数あるのですが、一様にみんな超シニカルでローテンションなんですよね。

こんな記事も流れているぐらいで。「愛社精神はしだいに薄れ、出世意欲も乏しくなる。就職情報会社の調査でこんな傾向が浮かび上がりました http://ow.ly/3grvb

「毎日を同じように暮らす」

なんて、今に始まったことじゃないんだけど、バブル崩壊までは「物語」があった。

「毎日を同じように暮らす」ことが「国の復興」や「所属する企業の成長」や「国の国際的プレゼンスを大きくする」というような成長や拡大という「物語」があった。

「物語」のために、「毎日を同じように暮らす」ことを頑張れた。

しかし、バブル崩壊以降、それがない。この20年は「物語」がない。

だからバブル崩壊前までの若者が「毎日を同じように暮らす」ということに感じていた絶望と、いまの若者が「毎日を同じように暮らす」ことに感じる絶望は深さが違う。今の子の絶望感たるや驚くほど深い。

就活する子たちの覇気の無さはそこにあるのではないかと思う。

「選んでください、死刑の方法(就職)はヨリドリミドリですよ!」と言ったって、ゲンナリする。

どうせ死ぬんだし。

就活は死刑囚の行進にみえる。

 

で、「演劇入門」に戻るんだけど、

「物語」を信じられなくなった今、僕らは「毎日を同じように暮らす」ことを楽しむ方法を発明する必要に迫られていて、その1つが、平田オリザさんの方法なのかもなと思ったわけです。本広企画「演劇入門」を見ながら。

 
 
ちなみに、脚本はハイバイの岩井さんの本なのだけど…中で、岩井さんが、何を面白いと思ったかを告白するのだけど、それは実にササイなことなのだ。

ササイだけど、そこに感動し号泣する。

その気持ちは凄くわかる。

そのササイな感動の源泉には「物語を失い、どんな就職をするにしても絶望でしかなく、けれども、その絶望の中で、頑張ってけなげに生きている、生きなければならない自分たち日本人たちへの哀しく優しい共感」がある。

「演劇入門」に描かれるような、大仰な芝居からナチュラルな普段言語の芝居へという流れは、表面上は「演劇の表現方法の正常化と進化」という話だけれども、実はそれは、1990年以降「物語」を損失した僕ら日本人が、繰り返される退屈な日常から(大きな物語がなくても)感動と意味を(従来通り)抽出するための方法を探し当てるための流れとして読むことができるのではないか。もちろん、その方法とは、いわゆる「静かな演劇」であり、最先端には岩井秀人がいる。のではないか。

そんなことを「演劇入門」を見ながら考えた。

そういうことをもろもろ考えさせられる芝居だった。

本広企画「演劇入門」は12/13まで駒場アゴラ劇場にてやってる。

観に行ってみてください。http://bit.ly/dFbfkm

 

(追記)

ツイッターのツブヤキから上のブログ記事にする時に、削ったんだけど、ツイッターで最初につぶやいたときに、

これ本広さんじゃなきゃいけない所ってどこだろうか?完全に岩井作品のような印象を受けた。企画立ち上げの功績だろうか。本広さんの貢献。

というようなことを書いたのですが、制作の野村さん(@nomuramss)から、次のような丁寧なツイートをいただいたので、参考までに掲載しておきます。

御覧頂いてありがとうございました。感想も興味深く読ませていただきました。

本広さんでなければできなかった理由ですが、まず、『演劇入門』の舞台化というところから台本の内容まで、本広さん主導で岩井さんと僕の3人で1年半、何度も話し合いながら創ったことですね。

『演劇入門』というタイトルで、自分の(いいと思っている)演劇をベースにつくることは、演劇を中心にしているものとしては、どうしても我田引水になってしまうので畏れ多い。と他の演出部の人たちとは話してます。自分たちの方法でなくても面白い演劇があるのは重々承知なので。

オリザさんの原作も、正直、全文の20%が留保でできているというか、ほかの演劇を否定しないためにいろんな迂回をして書かれてますよね。そういう部分は、本広さんではなく岩井さんや僕のほうがすごく気にしました。

本広さんは職業演出家なので、とにかく台本に忠実にやろうとしてました(台本に手を加えるのを恐れているといったほうがいいくらい…そういう業界で仕事しているということだと思います)。なので、「岩井作品だ」というふうに見ていただけたのは、かなりありがたいです。

あとは、団内的に、この充実した俳優陣が集まるというのは、演出が本広さんだったからこそ、というところです。希望しなければ、出なくていいので。実際、本広さんの映画に出たことある人が半分以上です。

それからこれは僕向けへのメッセージではないのですが、野村さんが、次のようなことをツイートされていましたので、これからの観劇の方は参考にしてみてはどうでしょうか。

『演劇入門』観たら、舞台のラストと、原作の新書のラストをぜひ見比べてください。

|

« 衆愚 | トップページ | 大人計画「母を逃がす」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56674/50161442

この記事へのトラックバック一覧です: 青年団リンク「演劇入門」:

« 衆愚 | トップページ | 大人計画「母を逃がす」 »