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2009/04/25

「偽伝、ジャンヌ・ダルク」舞台写真(その二)

舞台写真お披露目の続き。

(その一はこちら→舞台写真(その一)

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↑これは、ジャンヌ・ダルク最初の戦闘の後のエピソード。

戦場に一人残り、戦死した兵たちの間にたたずむ。

虫の息で生きていた一人の兵士がジャンヌ・ダルクを母親と間違って頼み込む。

敬虔なクリスチャンである彼は母親と翌日の5月5日の昇天祭は一緒に教会に行こうと約束をしていた。

ジャンヌは兵士の母親となり、彼が幼き日に唄っていた昇天祭の歌をうたってやるのである。

兵士は母の歌声を聴きながら静かに微笑み、そして息を引き取った。

この兵士はセリフはないながら重要な役で、チーム・ホワイトでは劇団員の峯尾晶が、チーム・ブルーでは斉藤新平が演じた。写真は斉藤新平バージョンである。

Jeanne09

そして、「人が人を殺す」という戦場の現実を目の前にし

ジャンヌ・ダルクが戦争の意味を見失いそうな所に

現れたアランソン候ジャン二世がジャンヌを叱咤する。

累々と広がる屍の山を見渡しアランソンがジャンヌに言う。

「これが神のご意思なのでしょう?」

ジャンヌも戦場を見回す。

フランス人、イングランド人

たくさんの男たちが死んでいる。

それぞれ胸の十字架に手を当てながら。

だって、明日は昇天祭だったのだから。

なのに・・・死んでしまった。

だが、それさえも神の意志・・・

「・・・・・・」

そう、これが神のご意思。

たとえ人間にとっては過酷なこの景色でさえ神のご意思・・・

ジャンヌは涙を拭き立ち上がります。

明日は昇天祭です。彼らのために一日喪に服しましょう。決して鎧は着てはなりません。決して剣を持ってはなりません。神に懺悔し、イエス様の昇天を静かにお祝いいたしましょう。そして、あくる5月6日は再び戦場に立ちましょう。」

そして、ジャンヌの一番の理解者であったアランソン候に向かって感謝の言葉をささげるのです。

このジャンヌの一番の理解者アランソン候ジャン二世を演じるのはチーム・ホワイトは若宮亮。そしてチーム・ブルーは劇団員の青木ナナ。ここはダブルキャストながらも、男優と女優によるダブルキャストで、味わいが非常に異なり、まったく色の違う芝居を見せつけられることになった。非常に面白い試みだと自画自賛である。ちなみに写真はチーム・ブルー、青木ナナのバージョン。

(ジャンヌが初めて先頭に立った5月4日の次の日が昇天祭であったのは事実で、そして、その日はジャンヌたちは戦闘に出ずに、死者たちのために昇天祭を祝ったのも事実です。)

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↓次の写真は、ヨランドとその娘マリー。

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マリーは、シャルル王太子の妻。

ヨランドは、そのマリーの母親である。

ヨランドはジャンヌ・ダルクの影の支援者として目される人で、僕の劇でも、娘マリーを操り、また娘婿であるシャルルを励まし、ジャンヌ・ダルクの奇蹟を演出しつつ、フランスを立ち直らせる影の策士として描いている。

なぜ、ジャンヌ・ダルクの奇蹟を純粋に奇蹟として描くのではなく、ヨランドの策として描いたのかと言うと、二つの要因がある。ひとつには、やはり史実にあまりにもヨランドの影が濃いということである。実際、ボードリクールの守備隊長ロベールがジャンヌに力を貸すのは確実にヨランドの指示があったはずなのである。もうひとつには、たとえどのような人為的な作がめぐらされていたと言っても、ジャンヌ・ダルクの起こした奇蹟は奇蹟であると疑いえないような大事業であったからである。彼女の奇蹟をほんものとして観客に受け入れてもらうには、極力嘘っぽい話は除くべきだと考えた。そしてヨランドがジャンヌを支持したとしても、もしもジャンヌが単なる農家の娘にすぎないならば、あんな勝利をもたらせるはずがないのであって、たとえヨランドがなにをしてもジャンヌの奇蹟性は燦然と輝いている。

ちなみに、王太子シャルルにはアニエス・ソレルという愛妾がいたということは有名なことであったが、今回は、その話をすると話がソレル(笑)ということで、シャルルは愛妻家というように描いてみた。

このシーンも、チーム・ホワイトとチーム・ブルーでだいぶ違うシーンになった。

チーム・ホワイトでは、マリーを加藤沙織、その母ヨランドを若宮亮が演じた。(写真はこのホワイトバージョン)

チーム・ブルーでは、マリーを白木あゆみ、その母ヨランドを青木ナナが演じた。

先の、アランソン候ジャン二世を演じた役者が性別を違えてヨランドを演じるわけだが、これが非常に面白いことになった。

イケメン若宮亮君ははじめての女役となり苦戦をしていたが、本番にはきっちり妖艶なヨランドを演じることになる。ここでは話せないような苦労がたくさんあるのである。

また衣装替えも小道具替えもなく、ヨランドからアランソンに切り替わるシーンは、観客をあっと言わせたようだ。演技力だけで別人、しかも女から男に変わるのだ。これは見ていても気持ちのいいシーンになった。

また、そのヨランドの娘マリーは、チーム・ホワイトとチーム・ブルーでは全く違う役作りになった。

加藤沙織演じるマリーは写真のように、あたまにリボンを結んだガキんちょである。ケンケンパをして遊んだりもする。

なかなか弾けない加藤沙織に業を煮やした僕が「じゃりん子チエでいけ」と思いつきで指示したのが始まりで、しかし、結果としてなかなかキュートなマリーになった。加藤沙織のかわいらしさも引き出せたのではないだろうか。

いきなりマリーの役作りが変わってヨランドを演じる若宮亮、シャルルを演じる乃木太郎は苦労したと思うが、最終的には三人とものりのりで、非常に明るく楽しいシーンにしてくれた。

ちなみに衣装スーツであるが、これ、フォーマル・バージョンでの芝居である。

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↓次の写真は、フランス国王軍の元帥ジル・ド・レと、娼婦ジャンヌ。

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ジル・ド・レは少年を何百人と殺した殺人鬼として有名だが、ジャンヌ・ダルクの側近であったというのも事実。

僕は依然、別の劇団で座付作家をしているときに、ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レの恋話を書いたことがある。そして、この二人を何とか結び付けようと言う作家の努力はたびたびおこなわれているようで、いくつもそのような話がある。

が実際に資料を当たってみると、そのようなことはないとほぼ断言できる。

むしろ、ジル・ド・レは、叔父のラ・トレムイユの指示によって、ジャンヌ・ダルクの身辺を探るスパイ行為をしていた可能性がある。今回の劇には書かなかったが、ジャンヌ・ダルクの死後、ラ・トレムイユは、シャルル派のヨランドを誘拐するという事件を起こすが、その時にジル・ド・レは手を貸していたりもする。

一方で、ジル・ド・レは、ジャンヌが火刑に処された後4年を経て、ともに戦ったオルレアンで、演劇祭を催すことになる。題して「オルレアン解放の神秘劇」。これは聖女ジャンヌ・ダルクの業績をたたえるもので、上演に1週間かかると言う大がかりなものであり、5か月にわたって上演される。観劇料は無料で、費用はすべてジル・ド・レが負担した(これによりジル・ド・レは経済的に没落します)。そして、なによりもこの劇の中では、ジャンヌ・ダルクを補佐する一番の信頼された男としてジル・ド・レ自身が描かれている。芝居の中の話である。つまり、そのような人物でありたかった、そのジル・ド・レ自身の願望が、彼の作った芝居に表れているのである。

このことからもわかるように、ジル・ド・レは、ジャンヌの獅子身中の敵でありながら、一番の信者であると言う、ほんとうに歪んだ精神構造にあったことが想像に難くない。

そういったもろもろの事実から、僕は、ジル・ド・レが少年少女を大量に殺害すると言う犯罪に走ったと言うように考えた。

この作品の中に出てくる男たちはみんなジャンヌ=母に癒されたがっているが、ジル・ド・レもその例外ではなかったと、そういうように描くことにした。

で、この娼婦ジャンヌは全くの僕の作りもので、実際、ジル・ド・レはもっとえぐいことをやっているのだが、ここでは、殺人に走らねばならなかった彼のゆがみを表現するために、娼婦を出しました。ジャンヌという名前の。

娼婦に関してはもう少し突っ込んで描くつもりでしたが時間の都合上書きえませんでした。

ジャンヌ・ダルクがなしたことの一つに、軍隊からの娼婦の追放があったのです。

これをジャンヌが性に対して潔癖だったからと言うだけでは面白くない。

僕は、ジャンヌ・ダルクの話を、書いているうちに思ったことなのですが、ジャンヌが百戦錬磨の男たちに支持されたのは、彼女が母であったからという地点に行きつきました。でなければ男たちは小娘の言葉を小馬鹿にするでしょう。でも聞き入れた。処刑裁判の記録を読むと実感できますが、とても19歳の乙女とは思えない。いや、年齢など関係なく、彼女は兵士たちの母だった。

一方、兵舎にはつねに娼婦たちがいるわけですが、彼女たちも同じで、実は兵士たちの母としての役割を担っていた。敬虔なクリスチャンである息子たちに大丈夫よと言ってくれる。だから娼婦は兵士たちに必要だった。

その兵士たちが必要とする娼婦たちを、ジャンヌ・ダルクが徹底的に追い出したのはなぜか?

それは母親は一人でいいと思ったからだと思うのです。

母は自分一人でいい。

それによって、すべての兵隊たちは、ジャンヌを必要とする息子たちに変わるのです。

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ジル・ド・レを演じたのは

チーム・ホワイトは峯尾晶、チーム・ブルーが斉藤新平。

また

娼婦ジャンヌは

チーム・ホワイトが加藤沙織、チーム・ブルーは白木あゆみ。

上の写真は、チーム・ブルーバージョンです。

と、長くなったのでこの記事はこの辺で。

舞台写真記事、次の回で終わりにしましょう。

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