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2009/04/25

「偽伝、ジャンヌ・ダルク」舞台写真(その三)

舞台写真お披露目の続きの続き。

(以前の写真はこちら→(その一)(その二)

まずは、(その一)でも紹介したシーンだが

ジャンヌ・ダルクが王太子シャルルに会いにロシュ城に向かう途中

シノンの旅籠に泊るところ。

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まだ、ジャンヌ・ダルクはなんの奇蹟も起こしていないのに

神の使いとして噂が先行し

旅籠の前にはすでに人だかりができていたと言う実話。

今回、ぼくらの芝居、ダブルキャストなので

チーム・ブルーは(その一)で紹介したように

VIP待遇のジャンヌの写メをなんとか撮ろうと市民たちがするのをボディ・ガードが守ろうとする(マイムで、新平から携帯を取り上げ、折っている(笑))。

一方、ここの写真はチーム・ホワイト。

きわめて素直に、みんなが聖女としてあがめていると言う風景。

チーム・ブルーは変化球で、チーム・ホワイトは直球。

そういう感じでわけて演出をしてみていた。

しかし、やはり何よりも面白いのは

史実としてのジャンヌ・ダルク。

奇蹟を起こす前から、ものすごい人気者だったということである。

そして、たいてい先行期待が膨らむと結果は失望しか生まないが

ジャンヌ・ダルクは見事にオルレアンをたった4日で解放してしまうからすごいのである。

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次の写真は、(その二)の最後で詳述した極悪人ジル・ド・レとその母親の図。

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(その二)の写真は、チーム・ブルーのもので、斉藤新平が演じていたが

こちらの写真は、チーム・ホワイトで、ジル・ド・レは峯尾晶が演じている。

峯尾はアロッタに入ってちょうど一年になるが、成長がもっとも目覚ましい役者である。

芝居の稽古が彼を成長させていると言うよりも、人間的衝突が彼を成長させている。

内面が成長すると芝居も成長し、そして顔も変わる。

その例が彼、峯尾晶である。

峯尾や安川と接していて、僕は自分の演技論を固めつつあるが、最近は人間作りみたいな不遜な分野へ足を踏み出してしまっている感がある。演技はテクニックではなく、生き方だと思うからである。最近はそう思うようになってきた。

と、脱線したが写真。

ジル・ド・レの母親役は、神の声だけで手いっぱいのはずのナカヤマミチコが演じている。

堂々たる母親で、ほとんど僕は何も演出をしていない。

何をやりたいかを察知する能力が高いと言うのもナカヤマミチコの優れた長所である。

そして、このシーンは、あえて、ピエール・コーションとその母親の図、それから、最初の戦闘後の、死せる無名兵士とジャンヌ・ダルクの図に似せている。

「偽伝、ジャンヌ・ダルク」という物語は、「息子と母の物語」であることを観客の無意識に植え付けるためである。

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次の写真は王太子シャルルが、ついにランスの大聖堂でフランス国王シャルル七世となる戴冠式の様子である。

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上がチーム・ホワイトのシャルル、劇団員の乃木太郎。

下がチーム・ブルーのシャルル、竹内勇人。

このシーンは僕は本当に大好きで感動する。

どんなにかジャンヌ・ダルクもうれしかったことだろう。

王太子シャルルをランスで戴冠させるなんて、半年前には不可能だと、だれもが思っていたのにである。

田舎町の小娘が、その偉業を成した。

これを奇蹟を呼ばずして、なにを奇蹟と言うのか。

以前の記事ですがこれをみてください。

美しき狂気

ランスへ行くことがどれだけ無茶なことだかわかるはずです。

そしてそのすべてをジャンヌ・ダルクの狂気が導いたのです。

(オルレアンの勝利後、フランス王軍の将軍たちはみなノルマンディ攻めをしようという意見でした。が、ジャンヌ・ダルク独りがランス行きを主張したのです)

で、政治的にいえば、ランスの大聖堂は、フランク王国の始祖であるクロヴィス1世が戴冠をした由緒正しき場所です。パリの大聖堂のほうが立派でしたが、この由緒ある土地で戴冠をさせる必要があったのです。そして、実際、ここで戴冠をしたシャルル7世の威光は、ヘンリー6世があわててパリで戴冠をしても、揺るぐことはなかったのです。もしも、シャルルがランスで戴冠をしていなかったら、その後のフランスの勝利はなかったとも言えるわけですから、このランスでの戴冠というのがいかに重要かということは主張してもしすぎることはないと思われます。

で、この戴冠式のシーンが素敵だったのは、おごそかであったこと。

マイムですべての儀式は行われましたが、聖油の塗布から、王のマントを羽織うところ、手袋をはめ、その上から王の指輪をするところ、そして戴冠、本物の戴冠式の順序で行われました。

そのこだわりなんか、観客たちは戴冠式の順序なんて知らないはずで、どうでもいいはずですが、しかし、これをやったことで、胸に迫るような本当の戴冠式ができたと信じています。

芝居前半の情けないシャルルが、本当の王になっていく様を観客もそれこそ体感したはずです。

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今回の芝居は一人が何役も衣装替えもなくやると言うものでしたが、このシャルル七世を演じた役者は、シャルルの幼馴染みである、ル・バタール・ド・オルレアン、オルレアンの私生児をも演じることになります。

僕自身は、シャルルが書いた書状がそのままバタールのところに届くシーンが大好きでした。手紙を出した人と受け取る人とが同じ。観客を混乱させないようにできたんじゃないかと思っていますが。ま、混乱してくれてもいいのですけど。

で、そのバタール。

本当は、シャルル、バタール、アランソン、この三人は子供のころからの仲なので、そこを書きたい気持ちもあったのですが、芝居が長くなってしまう。しかもジャンヌ・ダルクと関係のないところで。との気持ちから書きませんでした。

とくに、晩年、アランソンはシャルルに反旗を翻し、地方豪族の乱、プラグリーの乱をおこしますが、これはバタールによって鎮められ、バタールによってアランソンは逮捕されることになるのです。この三人の思いを考えると胸が張り裂けそうです。が、ジャンヌ・ダルクの本筋には遠いため、さらりと触れるにとどまることになりました。

以下の写真は、そのバタールが、オルレアンでジャンヌと初めて会うところです。

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いきなりビンタされるというのは僕の創作ですが

しかし、ジャンヌがル・バタールにとった対応はほぼこのようなことで

このあたりから、ジャンヌ・ダルクは勇ましいと言うか、男たちに怒ることが多くなってきます。史実として。

で、その怒りが空回りしていない。

怒られた男たちはシュンとはなるのですが、でもジャンヌの正しさについていく。

で、頑張ったら、ジャンヌが心から褒めてくれる。

うれしい。

ジャンヌに褒められたいがためにがんばる。

兵士たちは、ジャンヌの前に純粋無垢な子供のようになったのだと思うのです。

で、実はここがむつかしい。

舞台上、ジャンヌ・ダルクと言っても

実は安川結花であることには違いがない。

安川の怒りにみんなが内心反発を感じていると、表面上いくら、ジャンヌに従う男たちを演技していても、観客は馬鹿じゃないので、見抜いてしまう。

ここで、僕らはとんでもない所にぶつかってしまった。

演じるんじゃダメなのです。ならなければダメなのです。

本当に、安川結花がジャンヌ・ダルクにならなければ、男たちは屈服しない。

安川結花をジャンヌ・ダルクにする。

それが無理なことは承知のうえながら、挑戦をする道を選びました。

芝居的に派手なシーンを作るのではなく、普段のやりとりから、なんてことない会話から、人々がジャンヌを慕い崇めている、その感じを普通にだせたら。でなければ、奇蹟はあり得ないこととして、絵物語としてしか人々に響かない。普通に安川結花が奇蹟を起こせる肉体にならなければ、観客は、奇蹟を、ほんとうに起こったこととして受け取ってくれない。

実際、それができたかどうかは観客の感じ方にゆだねます。

が、今回、異常なチャレンジをして、それができた部分もあった。

ということは確実に言えます。

このル・バタールをビンタするシーンがそのいい例だろうと思います。

安川結花が安川結花であっては成立しないシーンだからです。

安川結花が安川結花にすぎなかったと言われることもあるのですが、いえいえ、安川結花なら、あそこでビンタしたあと、空回りがはじまるのです。空回らない安川結花になる。これがどれだけ安川に人間的成長を要求したか。で、あの安川が安川に見えたということ。それが何よりも成長の証しであろうと思うのです。

と言う感じで、修行のような稽古だったなあと今更ながらに思います。

で、写真。

以下は、裏切りのシーンです。

誰が誰を裏切るか。

ジャンヌによって王となったシャルルがジャンヌを裏切るのです。

手前の後ろ姿が安川ジャンヌ。

立っている青い衣装が竹内シャルル。

そして奥のひざまづいているのが青木アランソン。

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ジャンヌ貢献で、王となったシャルルは

大改革を進めることを心に決めます。

側近のラ・トレムイユ一党を排斥し

宿敵であったブルゴーニュ侯と手を結ぶ。

そしてフランスを統一し、イングランドを大陸から追い出す。

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そのことを告げられたアランソンは喜びます。

シャルルが王として目覚めたのです。

「やはり、あなたは王たる王だ!」

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幼き頃よりシャルルを支え続けてきたアランソンにとって

シャルルの王としての目覚めは何よりもうれしいことでした。

シャルルは言います。

「あの乙女のおかげだ」

あの乙女・・・ジャンヌ・ダルクのおかげだと。 

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アランソンもうなづく。

ジャンヌがいなければ、今はなかったのだ。

そして、シャルルに聞く。

「ジャンヌにこのことを報告しましょう」と。

だがシャルルは暗い顔で言う。

「このことはジャンヌに伝えてはならない」

驚くアランソン。

「どうしてですか?」

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尋ねるアランソンに、シャルルは恐るべき計画を伝える。

「ジャンヌをおとりにする」

「…おとり?」

アランソンには意味がわからない。

シャルルは淡々と答える。

内心は彼だってジャンヌを裏切りたくはないのだ。

シャルル

「いまやイングランドは、フランスを目の敵にするというよりも、

 ジャンヌ・ダルクだけを敵のように思っている。

 だから、それを利用するのだ」

アランソン

イングランドが、ジャンヌに目を奪われている間に…」

シャルル

こちらはブルゴーニュとの和議と、

 それに先立つラ・トレムイユ一党の排除をすすめる」

アランソン

「……」

シャルル

お前が誰よりもジャンヌのこと可愛がっているのは知っている。

 だが、フランス統一のためだ。

 それに、これこそがジャンヌの願っていたことのためなのだ。

 いいな、協力してくれるな?」

アランソン

「……」

アランソンは長い沈黙を経て答える。

「……わかりました」

ジャンヌがもたらしたランスの戴冠により、

シャルル七世は本当の王となっていた。

そして、

シャルルはジャンヌ・ダルクを見捨てたとそしられながらも、

ジャンヌ処刑後4年目にして、ラ・トレムイユ一党を排斥し、

追放されていたリッシュモンを政権に呼び戻すと、

ブルゴーニュ派と正式に和議を結ぶことになる。

そして、翌年パリを奪還、

祖父シャルル5世の改革をも上回る

税制、軍政、財政における大改革を行い

フランス絶対王政の基礎を作った勝利王となるのです。

死したジャンヌはそれを天界から見ています。

やさしく笑いながら。

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上は火刑に処されるジャンヌ・ダルクです。

「今日も、ふつう。」では本物の炎と見間違うようなライトを使いましたが

今回はシンプルに赤いだけの明かりです。

登場人物全員が詩のように輪唱するト書。

すべては観客の心の中に本物を作るためでした。

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火刑に処され死したのち

火刑に処したこと自体を

たとえばヘンリー6世の側近たちは後悔します。

そして、当の本人たるピエール・コーションも苦悩します。

これまで劇を見続けてきた白磁のトルソー

ジャンヌ・ダルクの胸像が動き出します。

ピエール・コーションの罪を許すために。

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ピエールの心にはずっとわだかまりがありました。

「なぜ神は私ではなく、あんな小娘を選んだのか」と。

ジャンヌはピエールに言います。

「違うのよ」

「?違う?」

「神は選んだのよ、あなたを。私を選んだようにあなたを選んだのよ」

「・・・神が選んだ?わたしを・・・」

そう。あなたを選んだの。
ううん。神はみんなを選んだの。
シャルルさまも、アランソンさまも、ジルも。
みんなみんな。神様がこの世に選んだ神様の子供なの。
だから、聞こえるはず。
耳を澄まして。
聞こえるわ。
神様のお声が。
きっと。」

そして、ピエールはついに神の声を聞くことになったのです。

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「偽伝、ジャンヌ・ダルク」は、そんなお話でした。

最後に集合写真。

まずはチーム・ホワイト(衣装ラフバージョン)。

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そしてチーム・ブルー(衣装フォーマルバージョン)。

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