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2008/01/20

蜷川幸雄演出「リア王」

蜷川幸雄演出「リア王」初日見てまいりました。

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール。

にしても

平幹二郎さんはほんっっとうに国宝ですね。

というか

彼の存在は、「富士山」とか「摩周湖」とか「グランドキャニオン」とか、そういう自然の美的造形に匹敵する。

74年の歳月をかけて刻み付けられた、そして彼でしかなしえない演劇的時間、その積み重ね、その皺、その声、その空間支配力、美しき涙・・・。もうそれ自体が息を呑むような「美」である。

そしてその「美」を表現するにふさわしいお題目、それが「リア王」だ。

「リア王とは彼のことだ」

もう、そう言わずにいられない。

「リア王」という物語のパンクでロック、アバンギャルドなプロットは、平幹二郎の肉体を得てはじめて胸を突く痛みとなる。

かつて演じられたサー・ナイジェル・ホーソン最期のリア王もそうだったのだろう。最後に演じた芝居がリア王だなんて、そんな素晴らしいこと、役者冥利に尽きることも無いだろうし、それにふさわしい人間もナイジェル・ホーソンしかいなかったのだろう(サーの称号を持つイギリスの名優ナイジェル・ホーソンは1999年、70歳のとき、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでリア王を演じたのが最後の舞台となった。その時の演出が蜷川さん、道化役は真田広之さん。ちなみにこのとき、役者として1人、シェイクスピアの本場に乗り込んでいく真田さんの姿を追跡取材するドキュメンタリーがあるのだけど、うちの劇団ではよく役者にそれをみせる。地位を確立してもなおチャレンジをし続ける真田さんをみるとほんとうに頭が下がる)

それが平幹二郎のリア王を見ていると本当のこととして分かる。

そして、平幹二郎のリア王も、サー・ナイジェル・ホーソンのリア王に劣らないリア王なのであって(きっと)、だから、この舞台に上げられた威厳も、愛も、老いも、狂気も、死も、すべてが本物なのだ。

もちろん、平さんだけではない。

グロスター伯爵を演じる吉田鋼太郎さん。

ケント伯爵を演じる瑳川哲朗さん。

道化を演じる山崎一さん。

もう、あっちゃこっちゃで繰り広げられる、おっさん素敵祭(笑)

素敵です。

素敵過ぎです。

涙します。

いたるところですすり泣きが聞こえました。

2008年のリア王

これこそ見なくてはなりません。

今まで見たどんな蜷川作品よりも胸を打ちます(きっと)。

3時間半、息もつかせぬジェットコースター演劇「リア王」

ハラハラしながら(話を知っていてもぜんぜんハラハラできます)、人間のおろかさに笑い、そして美しさに涙してください。

 

休憩時間、ロビーに出ようと移動中、偶然藤原竜也君に会い、簡単に挨拶をしました。

藤原君も初日に来ていたようです。

というか外人の年配の婦人を英語で案内していた。

もしかしたら彼女がロイヤルシェイクスピアカンパニーのプロデューサーのセルマ・ホストさんだったのかも。

そうだとしたら、それも素敵だなあ。

日本のリア王が世界のリア王ということだし、そのセルマさんの案内役をきっと蜷川さんが藤原君にお願いしたのだろうし(僕の勝手な想像)、そして蜷川さんは藤原君にそれをお願いしながら、この劇場のど真ん中で藤原君に、リア王を見せたかったのだろうし・・・。藤原君が50年後に演じるであろうリア王のために。そして、そのリア王を蜷川さんはみることができない(見ることができたら蜷川さんは120歳を越える!)受け継いでくれ、蜷川さんはそう思ったのか・・・。いや、50年後にお前はこれを超えることが出来るかな?という未来への挑発。ああ、麗しき連環。

僕は良き芝居を観て感傷的になりすぎているのかもしれません。勝手な想像がとまりません。

落ち着け俺。

しかし、そういった芝居外のサブストリーがもっともらしく思えるほど、今回の蜷川さん平幹さんのリア王はすごい。みなきゃ損です。断言。

 

ところで

おっさん素敵祭といいましたが

もちろん女優陣、若手も頑張っています。

銀粉蝶さんのおかげで、リア王がここまで笑えるんだというのが分かります。シェークスピアってすげえなあ。

とよた真帆さん、美しい。40歳!?信じられん。

内山理名さん、清楚なコーディリア。ふさわしい。

池内博之さん、悪役を気持ちよく演じてくれている。そして殺陣がかっこよすぎ。

高橋洋さん、いつもおいしいところ持ってくなあ。がらりとした演じわけは、観客さえだまされる。

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コメント

始めまして。ちょくちょく、お邪魔はしておりますが、書き込むのは初めてです。
私もリア王を拝見いたしました。

「もう、あっちゃこっちゃで繰り広げられる、おっさん素敵祭(笑)」

本当に!!!!!本当に、おじ様方の迫力にノックアウトでした。
蜷川さんの舞台は、欠かさず見ているし、シェイクスピアだし、原作も読んだし。と、のんきに見に行ったら、ダダ泣き。
迫力に押されっぱなし。
アンコールで立ち上がろうにも立ち上がれずでした。
おじ様パワー最高!!

投稿: reiko | 2008/01/22 12:06

reikoさん、どうも、お初です、松枝です。
ほんとにリア王よかったですよね。
あと何回か、そして千秋楽もみたいなあ。
おじ様パワー炸裂でしたね。
僕も芝居でおじ様とご一緒したいなあなんて思っちゃいました!!

投稿: まつがえ | 2008/01/23 01:07

おおっと、びっくり。
御自らのコメントを頂けるとわ!
「リア王」何回も観たいですよ。大阪の楽に行きたいぐらいです。

松枝さんは、若い方達とのお仕事が多いようですねぇ。おじ様方とも組んでくださいな。
しかし、面白い経歴をお持ちですね。プロフィールを読ませて頂きました。舞台もされているんですね。

普段は出演者で、観る舞台や映画を決めますが、今度は「松枝」さんの名前があったら、食いついてみたいと思います。
これからも、面白いものを作ってください。

投稿: reiko | 2008/01/23 12:32

reikoさま
松枝です。

> 今度は「松枝」さんの名前があったら、
> 食いついてみたいと思います。

よろしくお願いします!
おじ様方とも芝居やってきたいと思ってますので~。

> これからも、面白いものを作ってください。

ありがとうございます。
がんばりますっ!!

投稿: まつがえ | 2008/01/24 07:57

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