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2005/06/13

ニルス・ミュラー監督「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」

イタイ映画です。(いかネタバレですんで要注意)

見ていてじわじわ苦しくなるほど
不器用で痛い・・・時にはイライラさせられるかも・・・
でもショーン・ペンの演じる痛い男は確実にそこに居る
・・・みたいな映画です。

良く
マーティン・スコセッシ「タクシー・ドライバー」
と比較されているみたいですが
確かに似てますが根本的に違うのは見終わったあとの感じ。

「タクシー・ドライバー」は
結構ハッピーエンドに近いものがあるじゃないですか。
ある意味爽快ですよね。
だから前半の、うだつのあがらない人生をさまようところでの陰鬱が
最後にはなんだか晴れる。

しかし、
この映画「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
では、それがラストまで続くというか。

で、「タクシー・ドライバー」は虚構で
こっちは実話がもとだということ。

「タクシー・ドライバー」は虚構だから
ある程度引いてみることができる。

もちろん、
虚構だか実話を元にしているかは事前に知っている必要はないけど
それでもやっぱり「タクシー・ドライバー」には娯楽性がある。

ありえないジャンプを
説得性とかリアリズムとかとは違うところでやってみせる。
そこで、観客も、「ああ引いてみろってことだな」というのが分かる。

もちろん、
ロバート・デ・ニーロは
十分リアリティのある人間としてそこにいるのだが

ストーリーとして
やっぱり在りえないことが・・・ていうか在りえるんだろうけど
まぁ僕らが経験しそうもないことが出てくるところで、
ドラマを味わうための客観性は必要になる。

しかし、
「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」は
何から何までリアルを積み上げる。

もちろん、
僕らが描かれているリアルの隅々を
すでに経験しているという事実は必要なくて
ただ
描かれていることに経験可能性を実感できるかどうか
それが大事なのである。

もう特殊なことが一切出てこない。

そのリアルを積み上げた先に
タイトルでネタバレしているニクソンの暗殺

・・・このジャンプをいかに行うか・・・

これだけがこの映画の肝なのである。

そして実際ジャンプは見事行われ
僕らは大統領暗殺・・・
というニュースの向こう側の非現実に
ついにはリアルな実感を抱くことになる。

911なんて大げさなことを持ち出す必要も無く
ただなんで僕らが人を殺し人を愛し、そして裏切られるのか
それをもうイヤになるほどのリアリティをもってぼくらに突きつける。
それがこの映画の目的・・・のようなものなのである。

映画「マトリックス」では
「ぼくらがリアルと思っている現実は
 実はマシンたちにつくられた仮想現実である」
という「本当の現実」を知る
ってことがアプリオリに善であった。

しかし、「本当の現実」を知ることは苦しいんだよ
というのがこの「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」をみて思うことだろう。

僕らはヌードを見て興奮し勃起することを強要されている。
僕らはポジティブで明るい人生を生きることを強要されている。
僕らは努力すれば報われるということを信じるように強要されている。

リアルに切なくなり
リアルに落ち込む・・・そんな映画でした。

まず脚本ありきの映画のようです
これを気に入ったショーン・ペンが出演を決め
共演者に映画「21g」のナオミ・ワッツを指名させ
ナオミ・ワッツも脚本に共鳴し
そして出資者のレオナルド・ディカプリオも脚本に共鳴し・・・
ハリウッドの成功者たちが
こんなにも敗者の人生をリアルに作り出せるのはすごいなと
思いながら見ることも出来ます。
すごいというか・・・贖罪なのかな?

リチャード・ニクソン暗殺を企てた男@映画生活

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