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2005/04/14

劇団、本谷有希子「乱暴と待機」

がーん。すごい。
おもしろい。
本谷さんの芝居はじめてみるが
これ面白い。かなり。しかも戯曲ウマイ。
とりあえず良かったので見に行ってください。
新宿駅からほんと近いし
ぶらっと見に行って欲しい。
(空席も在ったから)
 ↓
乱暴と待機。

最初はやっぱり松尾スズキ臭がしました。
最初の男と女の会話。
笑いに関するもので
シュールとベタはどう違うのか・・みたいなところは
松尾さんの「悪霊」だなぁと。
でもそれはそれとして、このシーンとても笑える。

寡黙で笑わない男と
その男に献身的に接する女。
この女が馬渕英里何さんね。
スウェット着てます。

このスウェット、妙に着古してあってぺらぺらで
スウェットのエロスというものを感じることが出来ます。
最近の男が演出する芝居は
ぼくんところもそうだけど
裸のエロスというか直接的で
素足を組み替えるときにパンツが・・・みたいな
そういう奴だけども
露出はないけどエロイというか
スウェットのエロさって・・・なるほど
うーん、本谷有希子やるなぁというかんじ。
女のクセにと言うべきか
女だからと言うべきか。。。

さらにこの男と女の関係。
これがとっても興味深い。
男は女に復讐しようとしているらしい。
しかもかなり最高レベルの復讐を企てようとしている。
ただ思いつかないので日々考えている。

思いつかないのはそれだけじゃない。

なんで復讐をしなければいけないのか
それさえも男は忘れているのである。
でも復讐しなきゃいけない。
もっともひどいやり方で。
でもなんで復讐しなきゃいけないかは忘れちゃった。
・・・・・。
こんなキュートな設定。もうズルイ、くやしい。
そんな感じであった。

「理由なき復讐」
「自動化された復讐」
そんな文字が僕の頭の中を勝手に飛び回る。
もちろん、そんな哲学的なことではなかったのだけど
最近の僕の見るところでは
ホーリーランドじゃないけど
ほんとうのエンタメは哲学的にも興味深いものだから。

で、馬渕さん演ずるスウェット女だけども
復讐される本人でありながら
男のことを「おにいちゃん」と呼び
すごく愛しているようであり
健気に、毎晩寝るときに男に対して
「おにいちゃん、明日は思いつきそう?」
と聞くのである。
自分への復讐の方法が思いつきそうかと。
で、おにいちゃんは必ず
「ああ、きっと明日はおもいつくさ」
と言うのである。
そしてまた必ず、スウェット女は
健気に
「よかった」
とのたまい、カレンダーに丸印をして
そして電気を消して寝るのである。
これは毎晩繰り返されている。

・・・・・。
引き伸ばされた復讐者と被復讐者の関係。
これは幸せな風景にとても似ていた。

なんだろう。
この知的喜びは。
スウェット女が「よかった」という。
お兄ちゃんが自分への復讐を思いつけることを「よかった」と言う。
なにが「よかった」のか。
スウェット女にとって他人の喜びが自分の喜びなのである。
マゾともちと違うのかも知れないが
そういう方向の女なのである。

しかし、それは物語の最後で汚くもひっくり返される。
(ここについてだけはこのシーンが
 逆に全体の知的な雰囲気をぶち壊している気がするが
 しかし、女の観客たちはそのシーンでみな泣いていた。
 ・・・・これも非常に興味深い現象)

もちろん奴隷がほんとうは主人であるというような
ある種のサドマゾの「転倒」
これについてはぼくも理解しているし
最後にスウェット女が自己主張するのは
まぁ、そういうことなのかなと・・・納得しようと思いはする。
だが・・・

見終わったあと
すぐには僕の中の違和感を言葉に出来なかったけど
今思うに、僕の中の違和感は
ヒロインに「あたしだってウンコするのよ」とぶっちゃけ言わせることの違和感というか。

スウェット女の自己主張
こればっかりは(男にとっての)エロスに反するのだ。

一方、女たちが泣いていたのは
ヒロインが「あたしだってウンコするのよ」とぶっちゃけることに対する
絶大な共感というかそういうもんなんだろうと今になって思う。
あ、ちなみに、「ウンコ・・・」は別に舞台の中で言われている言葉じゃない。
スウェット女の自己主張を手短に僕が超意訳しただけ。

「めんどクサイこと込みであたしを受け入れてよ」

とは言うものの、これは、この違和感は少しも傷じゃない。
むしろ深く考えさせる。
女は非ユークリッド幾何学の世界に住んでいる。
むしろ僕の日々の戦いは(女とのというわけではなく)
めんどくさいこと込みで世界を受け入れようとする戦いだったりもするからだ。

とりあえず僕の考えを言わせてもらえば・・・

スウェット女は最後までぶっちゃけて欲しくなかった。
というのも、彼女の自己献身
・・・他人も自分も傷つけてしまう徹底した献身
は観客がちゃんと見届けているのだから。

スウェット女は男に覗かれているのを承知で間男との情事に臨む。
それは二段ベッドの下の階でセックスしようと誘う間男の欲望を言葉巧みにいなし、
おにいちゃんから見えるところにポジションを作るシーンで見事に表現されている。
つまり、もう観客は知っているのだ。
だからこれをあえて言葉でぶっちゃけるのは美しくない・・・
そう思ってしまうのである。
ぶっちゃけなければ女は観客=神だけが知る徳をつむ聖女となる。

ぶっちゃけることでスウェット女は男たちと同列の生き物になる。
自分が聖女であることを理解して欲しい欲望。

ぶっちゃけなければ
女はバタイユが言うところの聖女になっていた。
男にとって女は神聖なものなのである。。。

いや、そうするべきだったと言っているのじゃない。
バタイユが古く、本谷有希子が新しいということに驚いているのであって
男が古く、女が新しいということに驚いているのである。

まぁ、そんな小難しいことじゃないんだろうと思う。
たんに楽しい芝居なんですよ。
でも沢山のことを考えさせてくれる芝居でもある。

ぜひぜひ見に行ってください。
そして時間があったら考えてみてください。
面白いこと気付いたらこっそり教えてください。

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コメント

トラックバックありがとうございました。

自動化された復讐というのは、
なんとなく、
北田 暁大: 嗤う日本の「ナショナリズム」
の、連合赤軍の総括のくだりに似ていますよね。

私はまだ、
「乱暴と待機」の感想をアップできていないのですが、
もしアップしたら、トラックバックさせてください。

投稿: 鈴木厚人 | 2005/04/15 13:32

鈴木さん、はじめまして。
たしかに自動化された復讐って言葉はそうですね。
影響うけたんかな?
でも内容は違いますね。
本谷さんのは、もっと優しい復讐ですね。

投稿: 松枝 | 2005/04/15 21:40

TBありがとうございます。
いやー、面白かったですよねー。
「知的喜び」ですよね。
「知的悦び」とも言えるような(笑)。

投稿: しのぶ | 2005/04/17 15:14

しのぶさん、どうもです。
知的悦び……まさに。
悦楽でしたー。

投稿: 松枝 | 2005/04/20 00:09

はじめまして。たいへん遅くなりましたがトラックバック2つもいただいていたようで失礼しました。またありがとうございます。新年度になって観劇ペースも更新ペースも週1くらいになっています。乱暴と待機、今思い返すとすごくベタな愛のお話なのかもしれない気もしています。今後ともよろしくお願いします。

投稿: BlankPaper | 2005/04/24 19:16

BlankPaperさんどうも。
乱暴と待機・・・ベタな愛ですね。
確かに。うん。そう思います。

投稿: 松枝 | 2005/04/27 00:36

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