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2005/03/18

脚本直しの過程(2)

その美人女流漫画家の脚本を直す過程でしたっけ。

問題は明確じゃないけど
いくつかあることを総括せずにつらつらと。

まずライターの彼女は
当然漫画家としては大家なわけだから
自分の作品に自信があるので
「直し」っていうのに耐えられない。

「直し」
シナリオライターは
プロデューサーや監督からの駄目出しを受けて
何度も書き直すことがある。

しかし自分の作品に駄目出しされて気持ちいいわけがない。

「直し」=自分の作家性に対する否定

というように思うと大変なわけです。
だから多くのシナリオライターは
自分のことを芸術家とは思わずに
職人と思うようにしていたりするわけで。

そういう意味で言うと
本来芸術家でありシナリオを始めて書く彼女は
職人に徹することがたぶん辛かったのだと思う。

加えて那須語。

タダでさえ理解するのが難しい上に
芸術家の彼女は職人ではないので
監督の意向を理解して書くというよりも
自分の書きたいように書きたいタイプ。
よりコミュニケーションが難しかった。

さらに自分の反省を込めて言うと
デーモン白書が難しい。
那須語が難しいのに
那須さんのイメージする映画の背景を説明する
その案内書である白書自体が難しい。
もう何を理解せよと言うのかと言いたくなるぐらい
わけ判らなかったのだと思う。

だから僕は那須さんに
もっと判りやすく書けと言われていた。
これをサボタージュしたのが
僕の許されない罪のひとつだ。

彼女は何稿まで書いただろうか?
台本になっていないものも数えると
7稿ぐらい書いたのではないかと思う。

ある日など深夜の1時ぐらいにあがった。
車で彼女の家まで行きピックアップ
(僕と彼女の家はすごい近かった)
夜食をコンビニで買って
東撮のスタッフルームまで行き
そこで彼女の書いたものを
僕がシナリオの体裁に直す。
上がったのは3時ぐらいだったか。
シナリオの体裁に直すのは
彼女がシナリオの文法を知らないから。
柱とかないし。

彼女は僕に「すげぇ面白いでしょ?」と聞く。
もちろん最初はすげぇ面白かった。
しかし短くする過程で
かならずしも同意が出来なくなっていった。

彼女も監督がどう直せと指示しているのか
わからなくなっていたのだと思う。
説明できる位置にありながら
おこがましいのではないかと
自分が前に出て説明しようとしなかったのは
僕の大きな罪だと思う。
(本来的に説明すべき人でさえ
 監督が何を考えているのか理解しようとしなかったので
 彼女にちゃんと説明できるのは
 いまさらだけど現実的に言って僕だけだったのだと思う)

とうとう彼女は監督の意図する直しの本質がわからず
ページ数を削ったりキャラをいじくったりするだけの
二次創作的な改変だけを行うようになっていった。
そんな本が面白くなっていくわけがなかった。

はじめてシナリオを書くことを経験する彼女に対する不親切。
那須さんの意図する世界を彼女に対して説明し切れなかったこと。
彼女の作家としてのプライドと那須さんへの不信。

これが最終的に彼女のシナリオ作家デビューを幻のものとしてしまった。

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