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2005/01/23

Mr.インクレディブル

締め切りで追われているのに、blogります。
現実逃避です。はい。

巷での評価の高い映画です。
「Mr.インクレディブル」

で、僕の評価も高いです。
なにより爽快だし。
ていうかこういうスーパーマンものって
無理があるじゃないですか。
だって本当はいないんだもん。
こんな超能力者を持った人たちって。

愛する人が死んでしまう。
生き返らせるには時間を巻き戻すしかない。
で、地球の周りをぐるぐる逆回転。
しだいに地球も逆回転し
時間が巻き戻り
愛する人が死ぬ前に時間が戻る・・・。

これって映画「スーパーマン」にあった場面だと思いますが
これを信じられる人ってどのぐらいいるのか。
ぼくは見たとき、いや、それって・・・って思った。
笑っちゃったかもしれない。

映画って不便なメディアで
ほんとうにありそうな風に描かなくては
「ああ、なるほど、そうしたかったのね」
とか客になめて見られてしまう。
ときには笑われてしまう。
だから、このウソっこを本当っぽく見せる技術ってのが
むちゃくちゃ発展したんだと思います。

より演劇に近いころ、つまり昔は
なんちゃってが、観客の同情を買って
笑いには転化せずに、ときには感動や驚嘆へと観客を導いた。

普通のお茶の間の人間ドラマは
風俗習俗は多少変われども
そう違わない。

したがって、時代的な技術上のチャレンジなくとも
それなりのものを作ることができる。

ところがスーパーマン物は違うデス。

映画が信用されるかどうか、
まさにクレディブルかどうかの
チャレンジの連続となるわけです。

手がびよーんとゴムのように伸びる美女。
そんな人、いるわけありません。
しかしいたらどうか。
そういったことを、
映画とは関係ない余白の部分まで想像しつくす。
この映画にはその努力の跡が実にくっきりと見られました。

びよーんと伸びるわけだが、どの程度まで伸びるのか?
そんなことはこの映画に関係ないようだけども
おそらく「伸び」には限界がある。そう思わせるシーンがいくつもある。
無茶をして伸ばしたときに、「うっ」と彼女が小さな呻き声を上げる。
伸ばすのにもそれなりに負荷がかかっていると言う小さなシグナルである。
それが彼女の「伸びる肉体」というのに現実性を持たせる。

わかりますかね。
この重要性。

世界はエネルギー不変の法則とかそういうので縛られている。
だから無理するには確実に負荷がかかるわけです。
その負荷をさりげなく見せるというところに
その「無理」の本当っぽさを表現するコツがあるような気がします。

そして
怪力を発揮する主人公が保険屋さんになれば
単に正義感だけが溢れるおっさんに過ぎないと言うことの現実性。
人を救うことが公に禁止されれば
コソコソと人助けをすると言うことの現実性。
それらは逆説的な笑いに転化するけど
リアリズムを追求すればこその笑いだと思う。

髪。
これに今回こだわったようですね、この映画。
これもこのスーパーマン物語
ひいては、「現代における映画」を
如何にクレディブルなものとするかの戦いの物語を象徴する話だと思います。
如何にクレディブルな事象を詰め込んでも
髪が駄目では、駄目なんじゃの精神。

そういう意味で
非常に「映画」という宿命を受け入れて
真正面から戦っている良い映画だと思いました。
だから「Mr.インクレディブル」。
俺たちがちゃんと信用されるに足る映画を作っているかどうか
見てくれというそういう心意気ですな。タイトルは。

単純に爽快で楽しいしね。

ちなみに、こういった
リアリズム追求の方向
すなわち、遠近法主義的な映画作品の進化とはちょっと違うところに
ジブリ的な・・・つーか日本的な映画作品の進化の方向もあるように思う。
ていうか、ジブリも、日本映画界も
やっぱり遠近法はなんらかの正しさ=一般受容性
を持っていると思っているように思われるので
非遠近法と遠近法のハイブリッドになっているように思うわけだけども。

つーか物語に関する遠近法でいうと
Mr.インクレディブルが明らかに遠近法による
人物と事象の配置によって描かれているわけだが
映画「ハウルの動く城」は曖昧な人物と事象の配置によっている。
黒澤清「回路」だってそうだ。
西洋は、悪魔は右で神は左って陣地わけしてしまうが
日本は、悪魔は右だが左でもあるなどと混沌とさせる。

ただ、巨人とアンチ巨人みたいなもんで
非遠近法は遠近法にくらべて
いつもマイナーな位置にとどまらざるをえないのが
なんとも歯がゆいなぁと思ったり
選民意識に優越感を持ったり・・・。

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